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03 トライアル (1)マリーン探し
06 Baltroy (「俺の」レプリカント)
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ヴェスタがエメラルドグリーンの髪を輝かせて帰ってきたのは午後三時ごろだった。
その時俺は見るともなくプロジェクションを眺めていた。不思議なもんだ。自分がふらっと出ていく分には何も気にならないのに、ヴェスタがいなくなってしまうと時間を持て余す。
「どうだった?」
「楽しかった! あのね、来週からアラスターがエアランナーの運転教えてくれるって」
「へえ。良かったなあ」
アラスターはほんとによくできたやつだから、だいたい想像はついた。それにしてもゲームのほうじゃなくてエアランナーの方か。どんどん世界が広がって行くんだな。そりゃそうか。彼の興味は他のどのレプリカントより自由なんだ。
それでいいと思う。むしろそうでないと。
たまに、一生懸命俺と仕事してるヴェスタを見ていると、不当に彼を占拠しているような気になる。俺が無理に呼び出して、俺の言うことを聞かせているような。
そしてそういう一面は確実にある。だからできるだけ家では一緒にいないようにしている。俺の目から離れて自由になって欲しい。やりたいことをやってみて欲しい。まだヴェスタは生まれたばかりなんだから。俺の狭い世界を丸呑みさせるようなことはしたくない。
「がんばってな」
「うん! 免許取りたい」
エメラルドグリーンの髪をくしゃくしゃと撫でると、ヴェスタは目をきらきらさせて笑った。
その時俺は見るともなくプロジェクションを眺めていた。不思議なもんだ。自分がふらっと出ていく分には何も気にならないのに、ヴェスタがいなくなってしまうと時間を持て余す。
「どうだった?」
「楽しかった! あのね、来週からアラスターがエアランナーの運転教えてくれるって」
「へえ。良かったなあ」
アラスターはほんとによくできたやつだから、だいたい想像はついた。それにしてもゲームのほうじゃなくてエアランナーの方か。どんどん世界が広がって行くんだな。そりゃそうか。彼の興味は他のどのレプリカントより自由なんだ。
それでいいと思う。むしろそうでないと。
たまに、一生懸命俺と仕事してるヴェスタを見ていると、不当に彼を占拠しているような気になる。俺が無理に呼び出して、俺の言うことを聞かせているような。
そしてそういう一面は確実にある。だからできるだけ家では一緒にいないようにしている。俺の目から離れて自由になって欲しい。やりたいことをやってみて欲しい。まだヴェスタは生まれたばかりなんだから。俺の狭い世界を丸呑みさせるようなことはしたくない。
「がんばってな」
「うん! 免許取りたい」
エメラルドグリーンの髪をくしゃくしゃと撫でると、ヴェスタは目をきらきらさせて笑った。
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