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02 潜入捜査

24 Vesta (できること)

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『キャリコ・トルーディ』
「捜査してた?」
『いや。だって、AAAの役員だろ?』
「でもバルが言うんだから必ず何かに関わってると思うよ」
『大した自信だね』
「それはね」

 ザムザとの通信を終える。バルにもザムザにもちょっと相談できなかった。だってどっちからも100%ダメだって言われるもん。

 無茶だってわかってる。運が悪かったら殺されるのもわかる。でも、絶対何か動くと思うんだ。きっと、ReLFやイレプリカの尻尾をつかめる何かが。

「ファビア。ちょっと大事な話をしたいんだ。来てくれない?」

 ファビアが訝しげな顔をして付いてくる。事務室のドアを叩く。

「おや。どうしたの? ヴェスタ、ファビア」
「ヨールカにも聞いてほしい。入ってもいい?」

 ヨールカはちらっと部屋の中を振り返ってから、いいよと言った。事務室の中は殺風景で、奥に端末が載った大きなデスクがあり、あとは来客用と思われるソファセットがあるだけだ。ヨールカに促されて3人でソファに座る。俺の向かいに二人が並ぶ形。

「あのね、俺は本当はReLFの仲間になりに来たんじゃないんだ。俺はレプリカント人権保護局の捜査官で、ここの調査をしていたんだ。本当に人道的な扱いを受けてるのか」
「レプリカント人権保護局の捜査官? でも身分証は? まさかヒューマン?」
「俺は本物のレプリカントだよ。身分証の中身だけ変えてる。暗くしてもらえば、俺は目にサーモと暗視が入ってるからレプリカントだとわかるはずだよ」
「あんたが壊れて妄想癖に取り憑かれてるだけだったら? 何か証拠はあるの?」

 ファビアが自分の爪の先を見ながら冷たく言った。

「ファビア、君は半年前にもうここのメンバーになってるよね。だから君だけに声をかけたんだ。君は新人たちを精神的に誘導するための工作員でしょう?」
「……はあ?」
「半年前、君はオーナーに自分のブリングを送りつけて行方をくらましてる。IDのついたブリングが無くても行ける所は、知ってるでしょ? レプリカントなら風俗かここだけだよ」
「………」

 ヨールカの方が一つため息をついた。

「ファビア、心当たりはある?」
「はい。ヴェスタの言う通り……」
「ふーん……。それで、ヴェスタはどうしたいのかな。調査が終わったからここを出たいってことかな?」
「いえ。俺も本当に・・・仲間に加えてほしいんです。俺が仲間になったら、レプリカントに関するどんなデータでも渡すことができる。今、ReLFで持っているデータはAAAのばかりなんでしょう? 俺なら他の会社の納品データも渡せるし、ここの事も嘘の報告をしてあげられる。ねえ、レプリカントが逃げ込めるところは本当にここだけなんです。俺だってそれはわかってる。俺だってレプリカントだ。応援したい」
「それは、レプリカント人権保護局を裏切るってこと?」
「そうなる、ね。でも、俺がReLFについた方が沢山のレプリカントを守れると思う」
「……なるほどね、ヴェスタ。もしそうなら、少し待ってくれる?」

 端末の前に座ったヨールカがどこかにコールをする。たぶん本部。

「……そう。レプリカント人権保護局の捜査官だって言ってる。うん。捜査官IDで確認? わかった。ヴェスタ、あなたの捜査官IDを教えて」
「C571098rp」
 
 ヨールカがまた別なところに繋ぐ。今度はきっとレプリカント人権保護局。

「こんにちは。すみません、C571098rpさんとお話したいんですが。ええ、以前お世話になって。いらっしゃらない? 長期出張? バディの方は? 今日は非番? そうですよね、土曜日ですからね……。バディの方のIDを伺っても?」

 コールを終えたヨールカがこっちを見る。

「ヴェスタ、あなたのバディのIDは?」
「A492090rp」

 ヨールカが手元のメモを見て、納得したように頷いた。

「本当に捜査官みたい。わかった。でも一つ条件がある。ガーゴ」
「はい。ヨールカ」

 ヨールカに呼ばれたガーゴが返事をした。ガーゴはこの部屋にも入っているようだ。

「私たちにパスコードを教えられる? 書き換えるとかそういうことじゃなくて、信用してるかの確認なんだけど」
「もちろん」
「ガーゴ、20秒後にあの言葉を言って彼のパスコードを記憶してくれる? 私たちは一旦部屋の外に出るから」
「承知しました」

 ファビアとヨールカが部屋を出て行く。こんな感じできっと沢山のレプリカントたちが、パスコードを教えてプログラムを書き換えられていったんだろう。

「15秒経過」




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