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02 潜入捜査
05 Baltroy (舌打ち)
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随分軽そうな男だったな。
思わずデスクで軽く舌打ちした。アッシュグレイの髪、そばかす。唇が薄くて両端が上がっている。あれで連邦捜査局の捜査官? ザムザ・ホープ。いけすかないな。初対面で対遇か聞くか? しかも、思った通り連邦捜査局としてはお粗末な情報量とサポートだった。
結局、レプリカントを救い出すということは念頭にない。彼らは労働力を盗まれたヒューマンのために動いているから、泥棒たちさえ捕まえられればあとはどうでもいいんだなというのが透けて見えた。たぶんヴェスタが危なくなっても何もしないだろう。
こんなのにヴェスタを送り出さないといけない。ザムザの首根っこを捕まえて問いただしたい所だが、あいつに言っても仕方がない。こっちでできるだけのことをするだけ。
ReLFのことをもう少し調べてみる。このグループ絡みでレプリカントの死亡事件があるかどうか。調べた範囲では見つからない。ただ、人権のないレプリカントの方は事件扱いにならないから本当のところはわからない。ザムザの話では、GPSを付けても追跡できない。ならどうやってヴェスタの位置を捕捉するかだ。位置情報のプロッターはあるにはあるが、それを回収できなければ場所がわからないままだ。
「うーん……」
正直、不安の方が大きい。俺が一緒に行ってやれればできることもあるかも知れないが、今回はそれができないからな。よりによってヴェスタ単独か……。でもヴェスタには不安だとは言えない。
ヴェスタと改めて打ち合わせする。侵入方法は向こうから指定済み。今思いつくだけのことを話す。埋め込みタイプの通信機は本当は体に傷がつくから勧めたくはなかったけど、他に持ち込めると確信が持てるものがない。あとは送られてきた写真から位置情報を推察するしかない。かなりきつい。
ザムザの方から何か安心材料がないかなと思ったが、身分詐称用のブリングと身分証とAIチップしか用意してもらえなかった。ヴェスタの方に連絡が来たと思ったら、個人的な食事の誘い。
なんだそれ。舐めてんのか。ヴェスタ個人に興味があるんだろう。まあ、ヴェスタは美形だし、性格も素直で賢い。誰かの関心を引いて当たり前。局内では俺とヴェスタがセットすぎて誰も声を掛けないだけ。
誘いに応じて出かけたヴェスタを待っていたわけではないけど、ごちゃごちゃ考えていたら日付が変わっていた。そう言えばヴェスタが誰かと出かけるなんて初めてかも知れない。初めてのお出掛けでこの時間かよ。
「心配なら連絡してみては?」
「は? 何」
レッダは時々訳の分からないことを言い出すようになった。
「ヴェスタのことが心配なんでしょう?」
「あいつは成人と同じ扱いだろ。心配なんかしてねえよ」
「でも普段ならあなたはそんなに時計を見ませんし、そもそもこんな時間までリビングにいませんよね」
「そういう統計を勝手に取るんじゃねーよ。そもそも確率なんてどうにでもなるって言ったのはお前だろ」
「はいはい」
ため息をついてブリングを落としたところで、ヴェスタがふらふらで入って来た。ワインの匂い。焼いた肉の匂い。どこかのビストロにでもいたのかな。ヴェスタは俺がいたのに驚いて、すぐにバスルームに入った。なぜかほっとした。
やれやれ。
思わずデスクで軽く舌打ちした。アッシュグレイの髪、そばかす。唇が薄くて両端が上がっている。あれで連邦捜査局の捜査官? ザムザ・ホープ。いけすかないな。初対面で対遇か聞くか? しかも、思った通り連邦捜査局としてはお粗末な情報量とサポートだった。
結局、レプリカントを救い出すということは念頭にない。彼らは労働力を盗まれたヒューマンのために動いているから、泥棒たちさえ捕まえられればあとはどうでもいいんだなというのが透けて見えた。たぶんヴェスタが危なくなっても何もしないだろう。
こんなのにヴェスタを送り出さないといけない。ザムザの首根っこを捕まえて問いただしたい所だが、あいつに言っても仕方がない。こっちでできるだけのことをするだけ。
ReLFのことをもう少し調べてみる。このグループ絡みでレプリカントの死亡事件があるかどうか。調べた範囲では見つからない。ただ、人権のないレプリカントの方は事件扱いにならないから本当のところはわからない。ザムザの話では、GPSを付けても追跡できない。ならどうやってヴェスタの位置を捕捉するかだ。位置情報のプロッターはあるにはあるが、それを回収できなければ場所がわからないままだ。
「うーん……」
正直、不安の方が大きい。俺が一緒に行ってやれればできることもあるかも知れないが、今回はそれができないからな。よりによってヴェスタ単独か……。でもヴェスタには不安だとは言えない。
ヴェスタと改めて打ち合わせする。侵入方法は向こうから指定済み。今思いつくだけのことを話す。埋め込みタイプの通信機は本当は体に傷がつくから勧めたくはなかったけど、他に持ち込めると確信が持てるものがない。あとは送られてきた写真から位置情報を推察するしかない。かなりきつい。
ザムザの方から何か安心材料がないかなと思ったが、身分詐称用のブリングと身分証とAIチップしか用意してもらえなかった。ヴェスタの方に連絡が来たと思ったら、個人的な食事の誘い。
なんだそれ。舐めてんのか。ヴェスタ個人に興味があるんだろう。まあ、ヴェスタは美形だし、性格も素直で賢い。誰かの関心を引いて当たり前。局内では俺とヴェスタがセットすぎて誰も声を掛けないだけ。
誘いに応じて出かけたヴェスタを待っていたわけではないけど、ごちゃごちゃ考えていたら日付が変わっていた。そう言えばヴェスタが誰かと出かけるなんて初めてかも知れない。初めてのお出掛けでこの時間かよ。
「心配なら連絡してみては?」
「は? 何」
レッダは時々訳の分からないことを言い出すようになった。
「ヴェスタのことが心配なんでしょう?」
「あいつは成人と同じ扱いだろ。心配なんかしてねえよ」
「でも普段ならあなたはそんなに時計を見ませんし、そもそもこんな時間までリビングにいませんよね」
「そういう統計を勝手に取るんじゃねーよ。そもそも確率なんてどうにでもなるって言ったのはお前だろ」
「はいはい」
ため息をついてブリングを落としたところで、ヴェスタがふらふらで入って来た。ワインの匂い。焼いた肉の匂い。どこかのビストロにでもいたのかな。ヴェスタは俺がいたのに驚いて、すぐにバスルームに入った。なぜかほっとした。
やれやれ。
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