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02 潜入捜査
03 Vesta (青)
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自分がした返事にまだ頭が混乱していた。でも仕方がない。自分がやるって言ったんだ。だって、できなくてバルのバディから外されたら、自分はバルのなんでもなくなってしまう。
ふらふらとデスクに戻ってReLFについて調べていると、コールが来た。画面に連邦捜査局と表示されている。どきどきして、受ける前に一度深呼吸をした。
「はい。こちらC571098rp」
『ヴェスタ・エヴァーノーツさん? 同じ保安機関内だから名前でいいよ。初めまして、俺はザムザ・ホープ』
画面に映し出された男はゴーグルをしていて顔がわからない。
「……初めまして」
『少し確認させてもらうけど、製造から一年以上経過したレプリカントで間違いない?』
「はい。製造年月日は98年の12月18日です」
『OK。AI支配率は?』
「ゼロです」
『ゼロ? AIチップは?』
「入ってません」
ザムザと名乗った捜査官が、画面の向こうでヒュウと口笛を鳴らしたのが聞こえた。
『なるほど。これは貴重だ。じゃあ、詳細に移るね』
俺がやらなければならないのは、レプリカント解放戦線のトップ、「イレプリカ」の正体を探ること。そして、囚われていると思われるレプリカントたちの保護。レプリカント解放戦線にメンバーとして入り込まなければならない。
「イレプリカについては、そんなに何も分からないものなの?」
『皆目。もしかすると何かのシステムの名称なんじゃないかって話もあるくらい』
「そうなんだ……」
『レプリカント解放戦線て言うくらいなんだから、よほど自立的なレプリカントなんじゃないかっていう……予測』
「レプリカントなのかな?」
『そう。それすら怪しい。レプリカントならAIが働いてヒューマンに悪さできないことになってる。でもイレプリカは自発的にレプリカント解放戦線を旗揚げして、あちこちを爆破したりなんだりしている。とにかくデータが全くないんだ。手が出せない。そこで……』
そこで捜査官であるヴェスタが解放戦線に共鳴したレプリカントと言うことにして、仲間として潜入し、イレプリカの正体、少なくとも人なのかどうかだけでも確認して欲しい。
『潜入方法なんかは、実際に会って話したい。今度の火曜日にミーティングできないかな』
「はい。いいですよ。火曜日ですね」
「火曜日な」
はっと振り向くと、バルが端末を覗き込んでいた。
「こんにちは。俺がヴェスタのバディで発注者のバルトロイだ。作戦終了まで宜しく」
『OK、バルトロイ。宜しく』
コールが切れる。
「なんで? 俺の単独って……」
「バーカ。本当に一人で何から何までやるなんてできるわけないだろ。現場に出なくてもサポートってのはできる。俺は今回はここでお前のバックアップをやる。潜入は任せた」
カッと自分のほおが赤くなったのを感じた。髪の色もこれじゃ変わってしまう。でも嬉しい。
「まずその髪の色を染めろ。わかりやすすぎる。嘘がつけないだろ」
髪の色。何色にしよう………。
家に帰って鏡を見ながら考えた。瞳の色がブルーグリーンだから、髪もそうしようかな? いっそ全然違う色に染めてやろうか。
「レッダ。何色がいいと思う?」
「瞳の色を考慮するなら、オレンジや深紫色などがビビッドな印象になりますね。アイボリーなどもお勧めです」
試しにオレンジにしてみる。確かに元気な印象。次は紫。なんだか大人っぽすぎるかな……。アイボリーが一番無難な感じになった。これでいいや。
バスルームから出るとバルが帰ってきていた。最近はずっと遅かったからすごく嬉しい。
「早かったんだね」
「おう。髪……」
バルがすっと俺のまだ湿った髪に触れた。
「あの髪、好きだったんだけどな」
「……終わったら戻す」
バルはいいよ別にと言ってプロジェクションを付けた。例のレプリカント解放戦線のニュースが映し出される。
『……爆破され、従業員13名が負傷。重傷者は2名。3名のレプリカントが誘拐され…組織の詳細は不明……』
「イレプリカはシステムかも知れないんだって」
「うん。そうなんだってな」
「イレプリカってどういう意味?」
「たぶん、irreplica……『模造品ではない』」
「こういうやり方、どう思う?」
「感心しないな。考えても見ろよ。『俺たちはお前らの敵だ。お前らが死のうが怪我しようが知ったことじゃない。言うことを聞け』って言われて聞く気になるか? お前らの味方でござい、お助けしますんでこれこれこうしてくださいって言われりゃあ少しは妥協しようって気にもなるだろうけど。これじゃ逆効果だろ。レプリカントをこれからも差別してくださいって言ってるようなもんだ」
そもそもイレプリカという名前も、本人がそう名乗るからそう呼んでいるだけで、何なのかわからない。攫われたレプリカントがどこで何をしているのかもわからない。
レプカント解放戦線の言い分としては、AI支配率によってレプリカントの人権の有無を決めるのはばかげていると。全てのレプリカントには人権が与えられるべきであり、技術や知識をインストールされて無理矢理つきたくもない職業につけさせられるのは奴隷と変わらない。レプリカントを開放し、人権と職業選択の自由とオーナーからの自由をもたらすのが最終目標。
だからReLFはレプリカントを誘拐することを「解放」という。犯行が終わると犯行声明がだされ、何人のレプリカントを解放した、と言う。でもその解放されたレプリカントの行方はわからない。
ここに。潜り込む……。できるだろうか。
「……俺、できるかな……バルが俺のせいで動けてないって自覚なくて……」
「気にすんなよ。あんなの。俺はそうは思ってない。お前はよくやってる。俺たちは目立つからケチをつけたがるやつもいるってだけさ」
「ん……」
バルは強い。ちゃんとやらなくちゃ。バルのバディとして発注されたんだから。
ふらふらとデスクに戻ってReLFについて調べていると、コールが来た。画面に連邦捜査局と表示されている。どきどきして、受ける前に一度深呼吸をした。
「はい。こちらC571098rp」
『ヴェスタ・エヴァーノーツさん? 同じ保安機関内だから名前でいいよ。初めまして、俺はザムザ・ホープ』
画面に映し出された男はゴーグルをしていて顔がわからない。
「……初めまして」
『少し確認させてもらうけど、製造から一年以上経過したレプリカントで間違いない?』
「はい。製造年月日は98年の12月18日です」
『OK。AI支配率は?』
「ゼロです」
『ゼロ? AIチップは?』
「入ってません」
ザムザと名乗った捜査官が、画面の向こうでヒュウと口笛を鳴らしたのが聞こえた。
『なるほど。これは貴重だ。じゃあ、詳細に移るね』
俺がやらなければならないのは、レプリカント解放戦線のトップ、「イレプリカ」の正体を探ること。そして、囚われていると思われるレプリカントたちの保護。レプリカント解放戦線にメンバーとして入り込まなければならない。
「イレプリカについては、そんなに何も分からないものなの?」
『皆目。もしかすると何かのシステムの名称なんじゃないかって話もあるくらい』
「そうなんだ……」
『レプリカント解放戦線て言うくらいなんだから、よほど自立的なレプリカントなんじゃないかっていう……予測』
「レプリカントなのかな?」
『そう。それすら怪しい。レプリカントならAIが働いてヒューマンに悪さできないことになってる。でもイレプリカは自発的にレプリカント解放戦線を旗揚げして、あちこちを爆破したりなんだりしている。とにかくデータが全くないんだ。手が出せない。そこで……』
そこで捜査官であるヴェスタが解放戦線に共鳴したレプリカントと言うことにして、仲間として潜入し、イレプリカの正体、少なくとも人なのかどうかだけでも確認して欲しい。
『潜入方法なんかは、実際に会って話したい。今度の火曜日にミーティングできないかな』
「はい。いいですよ。火曜日ですね」
「火曜日な」
はっと振り向くと、バルが端末を覗き込んでいた。
「こんにちは。俺がヴェスタのバディで発注者のバルトロイだ。作戦終了まで宜しく」
『OK、バルトロイ。宜しく』
コールが切れる。
「なんで? 俺の単独って……」
「バーカ。本当に一人で何から何までやるなんてできるわけないだろ。現場に出なくてもサポートってのはできる。俺は今回はここでお前のバックアップをやる。潜入は任せた」
カッと自分のほおが赤くなったのを感じた。髪の色もこれじゃ変わってしまう。でも嬉しい。
「まずその髪の色を染めろ。わかりやすすぎる。嘘がつけないだろ」
髪の色。何色にしよう………。
家に帰って鏡を見ながら考えた。瞳の色がブルーグリーンだから、髪もそうしようかな? いっそ全然違う色に染めてやろうか。
「レッダ。何色がいいと思う?」
「瞳の色を考慮するなら、オレンジや深紫色などがビビッドな印象になりますね。アイボリーなどもお勧めです」
試しにオレンジにしてみる。確かに元気な印象。次は紫。なんだか大人っぽすぎるかな……。アイボリーが一番無難な感じになった。これでいいや。
バスルームから出るとバルが帰ってきていた。最近はずっと遅かったからすごく嬉しい。
「早かったんだね」
「おう。髪……」
バルがすっと俺のまだ湿った髪に触れた。
「あの髪、好きだったんだけどな」
「……終わったら戻す」
バルはいいよ別にと言ってプロジェクションを付けた。例のレプリカント解放戦線のニュースが映し出される。
『……爆破され、従業員13名が負傷。重傷者は2名。3名のレプリカントが誘拐され…組織の詳細は不明……』
「イレプリカはシステムかも知れないんだって」
「うん。そうなんだってな」
「イレプリカってどういう意味?」
「たぶん、irreplica……『模造品ではない』」
「こういうやり方、どう思う?」
「感心しないな。考えても見ろよ。『俺たちはお前らの敵だ。お前らが死のうが怪我しようが知ったことじゃない。言うことを聞け』って言われて聞く気になるか? お前らの味方でござい、お助けしますんでこれこれこうしてくださいって言われりゃあ少しは妥協しようって気にもなるだろうけど。これじゃ逆効果だろ。レプリカントをこれからも差別してくださいって言ってるようなもんだ」
そもそもイレプリカという名前も、本人がそう名乗るからそう呼んでいるだけで、何なのかわからない。攫われたレプリカントがどこで何をしているのかもわからない。
レプカント解放戦線の言い分としては、AI支配率によってレプリカントの人権の有無を決めるのはばかげていると。全てのレプリカントには人権が与えられるべきであり、技術や知識をインストールされて無理矢理つきたくもない職業につけさせられるのは奴隷と変わらない。レプリカントを開放し、人権と職業選択の自由とオーナーからの自由をもたらすのが最終目標。
だからReLFはレプリカントを誘拐することを「解放」という。犯行が終わると犯行声明がだされ、何人のレプリカントを解放した、と言う。でもその解放されたレプリカントの行方はわからない。
ここに。潜り込む……。できるだろうか。
「……俺、できるかな……バルが俺のせいで動けてないって自覚なくて……」
「気にすんなよ。あんなの。俺はそうは思ってない。お前はよくやってる。俺たちは目立つからケチをつけたがるやつもいるってだけさ」
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