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01 肌寒い季節になりました

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 どうやら先日、世界が終わったようです。

 終わったようです、というのは確認するすべがないためですが、少なくとも一週間ほどになるのに、どこかからの救助隊や、救援物資の一つも届かないことを考えると、おそらく終わってなくても他人の面倒を見てやる余裕のある人は残らずいなくなったと思量していいんじゃないでしょうか。

 まあ、どうなんでしょうね。自分の最近の住処はすっかり崩れ落ちた廃墟の壁と壁の隙間です。ちょうど三角屋根みたいになっていて、壁もあるので雨風が凌げるんですよ。シングルの布団一組がぴったり入るので、持ってきて寝ています。服とかも少しあります。先日までは普通の学生用アパートでした。

 ほんの数日前だと思うんですけど、ある日明け方に眠って目が覚めたら町全部崩壊してたんです。たぶんね、僕の場合は古い2階建てのアパートだったから、何かの衝撃でつぶれた時にうまい具合に僕の上に何も落ちてこなかったんじゃないかと。凄い音がしたような気がするんですけどね、僕も気を失ってしまったんでしょうね。よく覚えていないんです。気が付いたら焼け野原というか、がれきの山の隙間にいたんですね。

 僕のほかにもそういう人はちらほらいたみたいで、ここから10分くらいのところにある小学校の体育館の跡地あたりに、生き残った人たちが集まって暮らし始めたみたいですよ。

 なんでそこに行かないのかって?

 理由はいくつかあります。まずここが僕のアパートがあった場所だということです。単純に、僕の服とか私物がちょっと掘り返すと出てくるんですよ。だから人が集まってるところには本当に困ったら行けばいいかなと思っているということ。

 それから、僕はちょっとした有名人だったということです。この辺は大学が近くて、学生アパートが乱立しているんです。おととい体育館の方を見に行った時にわかったんですけど、同じ大学のやつらが結構生き残っているみたいなんですよね。あまりいいことで有名じゃないので、できれば極限までそいつらと顔を合わせたくないんです。状況が状況ですしね。

 そうなんです。あまりよいことじゃないのは僕だってわかっているんです。でも誰も急にこんなことになるなんで思わないじゃないですか。ちょっと大学デビューのつもりで遊んじゃっただけなんです。思ったより引っかかって来るやつが多かっただけ。

 そうなんです。僕、いわゆるビッチなんです。

 え? ビッチならビッチらしく男に媚びて生き延びればいいじゃないかって?

 それも一つの手だとは思うんですよね。でもほら、現状こんな状態でしょう。今は自分の私物が掘れるんでね、髭も剃れるし幸い底が割れなかった風呂桶に雨水が溜まってて、まだそこそこ気温も高いからそんな水でも浴びれて小綺麗なんですけど、これから状況が改善されるとは思えないわけで。

 何が言いたいのかわかりますか?

 小汚い男なんかこんな状況でわざわざ抱かないってことです。

 想像するに、回されて殺されてポイだと思います。だって結構やっちゃいましたもんね。ほら、僕、結構顔が綺麗だしテクもあるんで、ハマっちゃうやつがそこそこいたんです。でも全部ブッチしましたから。ブロックして着拒して、それでも追っかけてこられたら、「バラすけどいいの?」。

 まあ男との火遊びなんてあまりいい趣味じゃないですもんね。みんなだいたいそれで引っ込みましたけど、恨んでる人は多いと思います。その気がないやつまで本気にさせちゃったりしましたから。単純に面白かったんです。だからその辺も相まって本当に顔を合わせたくないんですよね。



 とはいうものの、もう10月半ばですよ。

 いつまでこんな生活できるんでしょうね。寒くなったら地獄ですよね。実際、明け方なんかはすごく寒いです。

 おや? 誰かこちらに歩いて来るようです。かなりガタイがいいな。若そうですね。やだなあ。知り合いじゃないといいけど。





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