37 / 37
第37話 第4階層 最終話
しおりを挟む「見つけたぞ! ネズミみたいにチョロチョロ逃げおって!!」
デュラハンが暗がりから現れる。
「しまった、見つかった! ハヤト先輩、逃げよう!! うっ……ああっ!」
ホノカは立ち上がろうとして床に崩れ落ちる。
「ほう、ゾンビの毒に足をやられたか。若造は目が見えず、小娘は歩けない。万策つきたな。すぐ楽にしてやるぞ」
デュラハンはハヤトたちに近づく。
「ハヤト先輩、ボクをおんぶして!」
「おんぶ?」
ハヤトは思わず聞き返す。
「ボクがキミの目になる。ボクを信じてくれ」
ホノカの言葉に一片の迷いもない。
「ああ……俺はお前を信じてるぜ」
ハヤトはホノカをおんぶして立ち上がる。
ホノカの温もりがハヤトの背中に伝わってくる。
信頼の剣が眩しく輝き始める。
「なっ! なんだその輝きはっ! 信じられん……貴様ら、信頼の剣に何をしたっ!?」
あまりの眩しさにデュラハンがうろたえる。
「何もしてないよ。ボクたちはお互いを信頼し合ってる。ただそれだけさ」
ホノカは答える。
「ありえん! 俺は人間がどれほど利己的か知っている! 自分の利益のためなら人を騙し裏切る汚い生き物だ!! 信頼に値する価値など微塵もないだろう!?」
「キミの境遇は本当に残念だと思うよ。信じていた主人にご両親を殺されるなんて……。でもっ! キミは誰からも信頼されていなかったのかい? キミのご両親やキミの部下たち。キミのためなら自分の犠牲もいとわない。そんな人たちにキミも出会ってきたんじゃないのかい?」
「だ……黙れ! 黙れ!! 貴様らの戯言につきあうつもりはない! 戦士ならばその剣で語れ!! 目の見えない若造と歩けない小娘。貴様らに何ができる!!」
デュラハンはハヤトめがけて大剣を振り下ろす。
「今だ! 剣を上に振り抜いてっ!」
ホノカは叫ぶ。
ハヤトは剣を振り抜く。
信頼の剣と大剣が交わる。
爆風が発生する。
「なっ……なに! 俺の斬撃を受け止めただとっ!」
デュラハンは驚きの声を上げる。
ハヤトは信頼の剣で大剣を受け止めている。
「デュラハン、これが信頼の力だよ。ボクはいつだってハヤト先輩を信じてる。ハヤト先輩が自分を信じれないときだって、ボクはハヤト先輩を信じているんだ。だってボクは、ハヤト先輩の絶対的味方だから」
ホノカは手を伸ばす。
信頼の剣を握っているハヤトの手に自分の手を添える。
剣の輝きがさらに強くなる。
「なっ? 俺の大剣が……?」
信頼の剣の光がデュラハンの大剣に広がってゆく。
大剣にヒビが入る。
ヒビはどんどん広がっていく。
「いくぞ、ホノカっ!」
「うん、任せて!」
ハヤトとホノカは信頼の剣を上に振り抜く。
デュラハンの大剣が砕け、信頼の剣はデュラハンの胸を大きく切り裂く。
「ぐぁっ!! この俺が……」
両膝を床につくデュラハン。
ライフが0になる。
「見事だ……この俺が……やられるとはな……」
デュラハンは小さな声で呟く。
しかし、その声はどこか穏やかだ。
「デュラハン、キミは強かったよ。でもキミだって知ってるんじゃないかい? 世の中、悪い人間ばかりじゃないって。信頼できる人間だっているし、信頼は美しい感情なんだって」
ホノカは優しく語りかける。
「……そうかもな。貴様らに受けたこの傷が暖かい……。お前の話を聞きながら、俺の両親や部下のことを考えていたぞ。かけがえのない人たちだった……」
デュラハンは胸の傷に手を添える。
「貴様らと戦えて光栄だったぞ! あぁ……暖かい……あたたか……い……」
デュラハンは満足そうな声とともに煙となって消えた。
「首なし騎士・デュラハン……強敵だったな……」
ハヤトはデュラハンがいた場所を見つめながら呟く。
「ダンジョンクリアだよ! キミはどんな夢を叶えてもらうんだい?」
ホノカはハヤトにおぶさりながら訪ねる。
「俺か? うーん、正直、まだ決めてないんだよな……お前はどうするんだ?」
「ボクの夢は決まってるさ! キミの隣にずっといること。困ったときはいつでも助けてあげるんだ。ボクはキミの絶対的味方だから」
「お前な~、金持ちになるとか、もっと他になにかあるだろ?」
ハヤトはため息をつく。
「いいや。キミの隣にずっといること。それがボクの夢さ。キミと同じ大学にいきたいよ。そして……そのあとの人生もいっしょに歩みたいんだ。おじいちゃんとおばあちゃんになって、キミがヨボヨボになっても、キミはボクのヒーローさ。キミの目が見えなくなったなら、ボクがキミの目になる。ボクはキミの絶対的味方でいたいんだよ」
ホノカはハヤトの背中に顔を埋める。
その頬は紅潮している。
「えっ? それってどういういみ――」
ハヤトが聞き返そうとしたとき。
「おめでと!! お兄ちゃん、お姉ちゃん☆ ダンジョンクリアだよ! ほんとうにお疲れさま☆」
どこからともなくマロンの声が地下道に響く。
一瞬にして風景が変わる。
ハヤトたちは赤いカーペットを敷いた王室に立っている。
パーティ全員が無傷で復活している。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、久しぶり! このダンジョンをこんなにすぐ攻略できるなんて! マロン、夢にも思わなかったな☆」
王座に座っているマロンはニッコリする。
「なにっ! ハヤト殿! あのデュラハンを倒したでゴザルか!? さすがでゴザル!! これで拙者の願いも叶うでゴザルよー!!」
ガッツポーズするレンタロウ。
「地球の法則に反するのはダメだよ☆ 自転車のサドルになりたいとかほざいたら、マロンはレンタロウお兄ちゃんの脳天を叩き割っちゃうなぁ♪」
「フッ……安心するでゴザルよ。ダンジョンで数多の敵と戦い、拙者も成長したでゴザルよ。そんなバカげた願いはしないでゴザル!」
「じゃあ、どんな願いなの?」
マロンは首をかしげる。
「ゆいな殿の消しゴムになりたいでゴザル!!」
「ちったぁ成長せんかいっ! このクソ侍がぁああー!!」
マロンは王座から飛び跳ねてレンタロウの胸にドロップキックを叩き込む。
「光源氏!!」
レンタロウは泡を吹いて床に倒れる。
ライフが70になる。
「ヨッシャー! 景気づけに一発いくぞぉ!! 声援ヨ・ロ・シ・ク!!」
マロンは倒れているレンタロウを立たせる。
後ろからレンタロウを抱きしめる。
マロンの両手はレンタロウの腹にしっかり巻き付いている。
「「「「「「イチ! ニイ! サン! ウチュー!!!」」」」」」
みんなでハモる。
マロンは腰を後方に反らせ、レンタロウを反り投げる。
レンタロウは綺麗な弧を描いて頭から床に激突する。
「紫式部!!」
レンタロウは奇声を発する。
ライフが30になる。
「フッ~~、スッキリした☆ 改めておめでとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん♪ 地球の法則に反しない願いなら一つ叶えてあげるよ☆」
マロンはウィンクする。
「う~ん、何にしよう……迷うな~」
ヨウスケは頭をポリポリかく。
「で・も!! ここでスペシャルコースの登場だよ☆」
マロンはいたずらっぽく笑う。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんがとっても面白いから、宇宙人たちはもっとみんなを見ていたいんだって♪ だから、もし次のダンジョンをクリアできたら、願いを二つ叶えてあげる☆ 今ここで願いを一つ叶えるか、次のダンジョンを攻略して二つの願いを叶えるか。選んでいいよ☆」
「願いが二つ!? でもダンジョンをクリアできなかったら願いは一つも叶わない……」
ハヤトは呟く。
「ボクたちが力を合わせれば、どんなダンジョンでもクリアできるさ! それに……ボクはキミともっと一緒にいたいんだ。このダンジョンでキミの良いところをいっぱい見た。キミともっと一緒にいて、もっとキミの力になりたい。ボクはキミの絶対的味方だからね!」
ホノカはハヤトの手を握る。
「わ、わたしも構わないわよ! どんな強敵でも私が盾になって受け止めてみせるわっ! ハァハァ」
レナは目を輝かす。
「私も別にいいわよ。ひとつより、ふたつ願いが叶うほうが良いに決まってるもの」
リンも頷く。
「拙者も同意! 自転車のサドルと消しゴム! 両方なれるでゴザル!!」
レンタロウは鼻息を荒くする。
「ぼ、ボクもそれでいいよ。今すぐ叶えたい願いもないしね」
ヨウスケはニッコリ笑う。
「そうか……俺も今はみんなともっと冒険したい。じゃあ、決まりだな!!」
ハヤトはみんなの顔をみる。
みんなは頷く。
「じゃあ、みんなで言うぞ! せーのっ!!」
ハヤトは掛け声をかける。
「「「「「「次のダンジョンに進みたいっ!!」」」」」」
ハヤトたちの新しいダンジョン攻略が幕を開けたのであった。
―――― おしまい ――――
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる