攻略対象から悪役令息にジョブチェンジしちゃう？

もしかして、また尊敬された？

    次は外務大臣の息子のクレマンだ。
    僕は剣術の授業から数日後、生徒会室を訪れた。うまい具合に生徒会長のクレマンがいた。
「邪魔してすまないね。ここの生徒会活動に興味があってね」
「邪魔なんてとんでもないです。先生も活動をされたことが？」
「ユベールで２年、生徒会長をしていたんだ」
嘘じゃない。あそこはアクの強い生徒が多かったから、まとめるのは大変だった。僕は置いてある書類をパラパラとめくった。
「これ、計算を間違えてないか？」
気がついた箇所を指差す。クレマンは筆算をして確認した。
「ホントだ。先生、見ただけでどうして分かったんですか？」
「下一桁を足していっただけだよ。二桁になったらその下一桁で足していく。そしたら違ってた」
これはユベールでもやってた方法。もっとも、あそこでは間違いを見つけたことは無かったが。

    クレマンがお茶を出してくれてくつろいでいるとディオンがやって来た。そうか、ディオンは副会長だった。いないうちにクレマンと仲良くなれて良かった。
「先生、今度は生徒会室ですか。何をしに来られたんですか？」
相変わらずの皮肉な口調にクレマンの方が慌てる。
「先生も生徒会長をされてたことがあるそうだ。興味があって来られたんだよ。計算ミスを見つけてくれて助かったんだよ？」
ディオンが悔しそうな顔をした。なぜだろう？
これならクレマンの好感度上げも出来たようだ。
    これ以上ディオンに絡まれる前に、僕は早々に生徒会室から出ていった。