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もしかして、フラグ?
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前世の記憶がある。それは僕には当たり前のことだった。でも前世に引きずられることは無く、今生を普通に過ごしていた。唯一、前世の記憶を活用したのは、貴族の政略結婚の見本のような父母の関係。僕が物心ついた時には父母の仲は冷えきっていた。
仲良きことは美しきかな。僕は無邪気な振りして父母に交流を持たせた。継続は力なり。今の2人の仲は良いと思う。少なくとも悪くはない。
母の居間に呼び出された僕は、母から嬉しくない宣告を受けていた。
「あなた、理科の先生をなさい」
「は?どこの学校ですか?」
「グレゴワール学院よ」
それって、王族のための、貴族の子女だけが通うあの学校?教えがいが無さそうなあの学校?僕の気分は一気に下降した。
「僕の専門は農芸化学ですよ?理科とは違います」
「たいした違いは無いのではなくて?それに、あなたなら出来るでしょう?」
あの学校でならできますね。優雅な所作で緑茶を飲む母を、僕は胡乱なものを見る目で見た。淑女の母は、音をたてずにカップを戻す。
「あなたのお勉強を続ける研究所はまだ出来てないではありませんか。出来上がるまでのあいだ、働いてる風を装ってちょうだい」
最後の方、ちょっと淑女らしい言い回しではなかった気がする。
「学院長からお願いされたの。今のあなたは何もしていないように見えるでしょう?お断りできなかったわ」
僕は土壌や人体に害の無い農薬や肥料を研究している。そのために留学した。そこで出した結果を自分の国で使えるよう実験する予定なんだが、実験器具が揃わない。すべてオーダーなので時間がかかっている。知らない人からはブラブラしてると見られてるのか。
「いいこと?明日にでも学院長にお会いしに行くのよ」
僕の就職は母の中では決定事項らしい。僕は大人しく了承して、侍女に緑茶のおかわりを注いでもらった。
仲良きことは美しきかな。僕は無邪気な振りして父母に交流を持たせた。継続は力なり。今の2人の仲は良いと思う。少なくとも悪くはない。
母の居間に呼び出された僕は、母から嬉しくない宣告を受けていた。
「あなた、理科の先生をなさい」
「は?どこの学校ですか?」
「グレゴワール学院よ」
それって、王族のための、貴族の子女だけが通うあの学校?教えがいが無さそうなあの学校?僕の気分は一気に下降した。
「僕の専門は農芸化学ですよ?理科とは違います」
「たいした違いは無いのではなくて?それに、あなたなら出来るでしょう?」
あの学校でならできますね。優雅な所作で緑茶を飲む母を、僕は胡乱なものを見る目で見た。淑女の母は、音をたてずにカップを戻す。
「あなたのお勉強を続ける研究所はまだ出来てないではありませんか。出来上がるまでのあいだ、働いてる風を装ってちょうだい」
最後の方、ちょっと淑女らしい言い回しではなかった気がする。
「学院長からお願いされたの。今のあなたは何もしていないように見えるでしょう?お断りできなかったわ」
僕は土壌や人体に害の無い農薬や肥料を研究している。そのために留学した。そこで出した結果を自分の国で使えるよう実験する予定なんだが、実験器具が揃わない。すべてオーダーなので時間がかかっている。知らない人からはブラブラしてると見られてるのか。
「いいこと?明日にでも学院長にお会いしに行くのよ」
僕の就職は母の中では決定事項らしい。僕は大人しく了承して、侍女に緑茶のおかわりを注いでもらった。
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