上 下
138 / 141
BL大賞9位で奨励賞のお礼の番外編

約束

しおりを挟む
    「水平線から昇る太陽を見るのもいいものだな」
帰りの馬車の中、初日の出詣でが気に入ったらしい殿下はエラくご機嫌だ。
「お前の前世は興味深い」
ちょっと嬉しいね。でも、殿下の膝の上で横抱っこされてるのは嬉しくない。オレ、30過ぎてるんだよ?ブレないなあ。
「私が上手く説明できない事柄が多くて。新年ならではの料理やオブジェなどもあるんです」
殿下の口角が上がった。
「新年ならでは、か。お前のことは、どう料理したら新年らしく美味しく食べられるんだ?」
ホントにブレないなっ!
    そんな言葉とはうらはらに、オレの後頭部をそっと持ち上げて、殿下の唇が額に触れた。
「これからも毎年、初日の出を見に行こう」
今でも、殿下がオレのことをいつまでも好きでいてくれる、とは思えないでいる。オレの気持ちに気づいてるのかな?だから『毎年』って約束をくれるのかな?
「そうですね。来年も連れて来てくださると嬉しいです」
「毎年だ」
ヤバい。ちょっと泣きそうだ。
「はい。毎年、お願いします」
殿下の唇が頬に触れる。
「もう、俺のそばから離れることは許さん。ずっとだ。ずっと初日の出を一緒に見に行くからな」
オレは返事が出来なかった。泣いちゃったから。殿下がオレを抱きしめた。
   もう何エンドとか考えないで、殿下にホントに愛されてるって信じていいのかな。


    オレは目を閉じて殿下に口付けた。
「離れません。ずっとおそばにおいてください」
目を開いて殿下を見上げた。
「今度逃げたら足枷を付けてやる」
「はい」
「手枷もだ」
「はい」
「牢にも入れるぞ」
「そんな目に合わないようにします」
オレは殿下の目許をそっと拭った。
「だから、泣かないでください」
殿下がオレの頭を抱え込んだ。
「泣いてなどない」
ゴメンね、もう泣かさないよ。
    オレはどっこいしょ、っと殿下の膝から抜け出して、片膝をついた。
殿下コンラート、愛しています。私と結婚してください」
殿下の手を取り甲に口付ける。殿下と目を合わせながら手を裏返し、唇で殿下の手袋を引っ張る。手首に指を這わせながら手袋をくわえて外し、手のひらに唇を押し付けた。
    殿下の頬に朱がかれた。激レア殿下、いただきましたー!
「私と一緒に、歳を重ねてくださいますか?」
殿下が目をそらした。
「当たり前だっ!」
「ありがとうございます。幸せにします」
「約束だぞっ!」
「はい、お約束いたしま、う?」
照れ隠しかな?殿下が強引にオレを横抱っこしてきた。殿下の腕の中がオレのホームポジションだねー。照れるー!

    ゲームとは似て非なるこの世界で、オレはオレとして殿下と生きていく。


    オレ、殿下と幸せになるよー!




                   [完]


これにて終わりとさせていただきます。

お読みいただきありがとうございました(●︎´▽︎`●︎)


    
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

処理中です...