【完】ＢＬゲームに転生したオレは鬼畜王子から逃げだしたい

きゅうじゅうさん

    「クラウスの所に長居ながいすると、あの子が拗すねるんだよ」
ならうちにあるお泊りセットはヤバくないのか？
「そこは、それ」
ウインクしてアルフォンスは言葉を続けた。
「健闘を祈る」
そう言って去っていくアルフォンスの背中を見送って、オレは昨日のホテルに向かった。



    緊張で吐きそうだ・・・。昼餐ちゅうさん会場の席は、今日も閣下の隣。閣下は隙のない微笑みで村長と話してる。

    『殿下』は頬を染めたり、ショックで固まってみたり、冷たい目をしたりって、オレの前では感情を出してたんだな。昨日だって明らかに怒ってたもん。理不尽だけど。ソファに縛りつけられて無言だった時だって、不貞腐ふてくされてたり睨んだり。
    子どもなのに子どもじゃいられない『殿下』がオレには素の自分を見せてた。その事に『殿下』本人は、もしかして気がついてなかったのか？
    オレ、今日の閣下を見て初めてそう思い至った。オレも大概だよなー。大好きな『殿下』なのに、ぜんっぜん分かってなかったよ。
    どうやら閣下のことをずっと見てたみたいだ。閣下が完璧な微笑みに少しだけ不思議そうな色をのせて、オレに顔を向けた。
    オレは手汗で落としそうなカトラリーを置いた。閣下の顔を正面から見る。ゆ、勇気を出せー。
「後ほど、コーヒーを飲みにお出でくださいませんか？」
よく言えた、オレー！閣下の目がまん丸になってる。『殿下』にこんな顔をさせるのってオレだけだー！自画自賛しちゃうぞー！でも手汗がヒドイ・・・。閣下が小さな声で尋ねてきた。
「あの男は帰ったようだな。代わりというわけか？」
ここで怒ったらまた繰り返しだ。ガマンだ。『殿下』の本音を引き出すためにここはガマンだ！
「そうかもしれませんね」
閣下の顔が完璧な微笑みに戻った。
「あとで行く」
うわー。怖い・・・。ベッド直行コース？昨日みたいな不意打ちは無理だろうな。ちゃんと言葉での話し合いができるかな？
    あー、帰ったらアルフォンスのあれとかアルフォンスのそれとかアルフォンスのあれやこれやを隠さないとなー。オレは大きく息を吐いて、味の分からない昼餐を食べた。