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きゅうじゅういち

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    驚きすぎて棒立ちになったオレの肩を閣下が抱きよせてきた。そのまま荒々しく唇を塞がれる。

    はっ?なんでー?

    閣下の胸に手をあてて押しやろうとすると、もっと強く抱きしめられた。な、内臓が出る!苦しくて手に力を込めると、ちょっとだけ腕を緩めてくれた。これで楽に・・・って、そういう問題じゃないだろ、オレー!口付けられたままお姫様抱っこされて、隣の寝室に運ばれた。ベッドにおろされて顔を両手で挟まれた。さらに深く口付けられる。閣下に馴染んだ体は、その熱を忘れてなかった。次第に力が抜ける。それに気づいた閣下が、膝でオレの足を割り込んだ。
「今夜はあの男とお楽しみの予定か」
唇を離して告げられた言葉に愕然とする。シャワーの音がしてたらそうなるのか?本当にこの人はオレをなんだと思ってるんだ!?
「私の方が満足させてやれる」
口許を歪めて言う閣下に心底腹がたった。男の一番の急所、閣下の閣下を握りしめる。相変わらずデカイな!思わず体を浮かせた閣下の鳩尾に膝を叩き込む。閣下が咳込んだ。その機会を逃さず、オレは閣下の体の下から抜け出し寝室のドアを開けた。
「どうぞお帰りください」
丁重に頭を下げる。2年だ。2年、暴れる患者を押さえて治療してたんだ。体力も腕力も付くさ!呆然としてるようにも見える閣下は無表情でオレの前を通り過ぎ、出ていった。かなり痛いと思うんだけど?無表情ってすげー!見送ったオレは、玄関先にコーヒー豆の包みが落ちてるのに気がついた。
「それを持ってきてくれたんだね」
いつの間に風呂から出てきたのか、頭にタオルをのせたアルフォンスが隣に立っていた。
タイミング悪く風呂に入っててごめんね、誤解させちゃったね、と謝るアルフォンスに頭を振る。
「さすがに閣下もオレなんかどうでもよくなっただろ。ちょうどいいさ」
「クラウスはホントにそれでいいのかい?」
「閣下がオレをどう思ってるか分かったからね。これで吹っ切れた」
正直言って、強がりだ!アルフォンスはオレの涙を見ないふりして、何も言わずにオレの頭を撫でてくれた。
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