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ごじゅうきゅう

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    閣下のもとを去って2年。

    オレは田舎で医者の助手をしながら過ごしている。オレの名前の医師免許は使えないもんね。
    この村にも抗生剤は流通している。心の中でちょっとドヤ顔しちゃったよ。でも錠剤にはできてないかー。入れ物代の上乗せや、輸送にはコストがかかるしリスクもある。錠剤化の研究をできなかったのが残念だね。次の患者を呼ぼうとして、なんか見覚えのある人だって気付いた。
「家政婦さん・・・」
か、閣下にバレた!?焦った顔のオレに、家政婦さんは優しく微笑んだ。
「坊っちゃまにはお伝えしておりません」
坊っちゃまって、閣下のこと?

    
    仕事を早引けさせてもらって、家政婦さん、エレオノーラさんにオレの部屋に来てもらった。閣下のところとは段違いに安い紅茶をだす。
「坊っちゃまは、不器用な方なのです」
エレオノーラさんは話しだした。あ、そう言えばエレオノーラさんは閣下の乳母さんだったって思い出した。だから坊っちゃま?その坊っちゃま、とてもじゃないけど不器用には見えないけどなぁ?オレの疑問を理解したエレオノーラさんが苦笑する。
「そうゆうところを、クラウス様に見せられないヘタレなところが不器用なんですよ」
ヘタレって・・・公爵閣下ですよ?エレオノーラさんは安い紅茶を飲んでくれた。
「『手の者』は私の方で抑えていますので、坊っちゃまがこちらに来ることはありません。出来れば、クラウス様から坊っちゃまの方へお出でいただけませんか?一度、坊っちゃまの素直な気持ちを聞いていただきたいのです」
必要なら閣下の手を縛っときますから、だって。問答無用でベッドに連れ込まれたら話を出来ないからね。うん。それよりエレオノーラさん、怖いことをサラッと言いましたよ?『手の者』を抑えてる?エレオノーラさんって何者・・・?行く気になったらエレオノーラさんに連絡するって約束した。閣下がどんな風に『不器用な坊っちゃま』なのか知りたくなったから。
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