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第3話:佐野昌志は知っている

2.後輩

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「あと、1週間しかない…。」

チラシ配りから帰ってきたそーいちはカレンダーを見てそう言った。

「俺も昌志がカレンダー持ってきてなかったら、あと1週間なんて思ってなかったよ。」

俺はそう言った。

「しかも、来週は祝日で学校休み。そう考えると、今日含めて5日間で探さないといけないのか…。ひろき、俺諦めねえから。」

そーいちは俺の方見てそう言った。

「やっぱり、そういうと思ったよ。それで、今野君はまだチラシ配ってるの?」

俺はそう言った。

「トイレ行ってから部室に戻るって言ってた。」

そーいちはそう言った。

「にしても、遅い気がするなあ…。」

俺はそう言って床に座ると、勢いよく部室のドアが開いた。少しびっくりしてしまった。

「先輩たちー!朗報ですよ、朗報!」

そう言って入ってきたのは今野君だった。ここの学校の生徒の腕を掴んでいる。嫌そうな顔してるけど、無理矢理連れてきたとかじゃないよな?

「その子はどうしたの?」

そーいちはそう言った。

「なんと、入部希望の子です!」
「だから、違うって!」

今野君が言ったことに対して、腕を掴まれている子はそう言った。あれ、なんかこの子どっかで見たことある気がする…。気のせいか?

「え、だって大ちゃんうちの部の話してたじゃん!」
「話しただけであって、入りたいとは一言も言ってないよ!」

今野君に『大ちゃん』と呼ばれたその子はそう言った。

「あ、えっと、もしかして、今野君の友達とか?」

俺はそう言った。

「いえ、初対面ですよ。大ちゃんの友達が『大ちゃん』と呼んでたのでそう呼んでるだけです。」

今野君はそう言った。

「初対面なの!?」

俺は思わずそう言った。

「とりあえず、一旦落ち着こう。なぎさもその、大ちゃんも座ろっか。」

そーいちはそう言った。




「えっと、つまり2人の会話まとめると、嘉瀬かせ君と嘉瀬君の友達が色んな部活のポスターが貼られてるところでどの部活に入るか話してて、なんでも部の話を少ししたところで、ちょうど今野君が通りかかって、その話が聞こえた今野君は嘉瀬君がなんでも部の入部希望者だと勝手に思って、無理矢理嘉瀬君をここに連れてきたということ?」

俺は今野君と今野君に無理矢理連れてこられた子、嘉瀬君の話を聞いてから、そう言った。

「そうです。」

嘉瀬君はそう言った。

「ごめん、なんでも部の話してたから入部希望者だと勝手に解釈して…。」

今野君はそう言った。

「いいよ。なんでも部には興味あったから。」

嘉瀬君はそう言った。

「嘉瀬君は中学の時何部に入ってたの?」

そーいちはそう言った。

「部活には入ってなかったんですけど、生徒会には入ってました。」

嘉瀬君はそう言った。生徒会に入ってたんだ、頭良さそう…ん?

「あ、思い出した!嘉瀬君、もしかして小松宮中学校出身?」
「そうですけど…?」
「だよね!中学の時、生徒会長してなかった?」
「してましたよ!もしかして、盛山先輩も小松宮中学校出身なんですか?」
「うん。どっかで見たことあると思ったら…!」
「あー2人で盛り上がってるところ申し訳ないんですが、オレも入りますね。大ちゃんって生徒会長やってたの?」

今野君はそう言った。

「うん。そんな大したことはないですけどね。」

嘉瀬君はそう言った。

「ということは、生徒会に入るか部活に入るかで悩んでるってこと?あ、掛け持ち?」

そーいちはそう言った。

「いえ、掛け持ちは難しいかなと思ってるので、部活で興味あるものがなかったら生徒会に入ろうかと思ってるんです。」

嘉瀬君はそう言った。まあ、掛け持ちなんて大変だよな。本当、昌志よく掛け持ちできてんなーと思うな。あれ、よく考えたら昌志、中学の時も生徒会に入ってたよな…?

「あの、なんでも部について質問してもよろしいでしょうか?」

嘉瀬君はそう言った。

「うん、なんでも聞いて?」

そーいちはそう言った。

「なんでも部って何をする部活なんですか?」

嘉瀬君がそう言うと、

「文字通り、なんでもする部活だよ!あ、でもオレたちでできる範囲でだけどね。」

と、今野君は言った。

「ざっくりすぎない?」

俺はそう言った。

「まあ、大体なぎさが言ってることで合ってるけど、学校内の人や学校外の人たちから頼まれたことを俺たちができる範囲でなんでもしますよって感じかな。」

そーいちはそう言った。

「なるほど。ボランティアと少し似てる感じだったりしますか?」

嘉瀬君はそう言った。

「ああ、そうかもね。確かに似てるかも。」

俺はそう言った。

「わかりました。ありがとうございます。あと、何時から何時まで活動するとか決まってますか?」

嘉瀬君はそう言った。

「「「…え?」」」

俺ら3人はそう言った。口を揃えたのは偶然だけど、そりゃそのはずだよな。だって、決めてないから。

「あと、依頼が来るまで何するかとかどうやって依頼を集めるかとかあと…」
「あー、ちょっと待って大ちゃん。そろそろ帰る時間じゃない?ほら、17時から用事あるって言ってなかったっけ?」

嘉瀬君が言っているところをなぎさは遮って、部室にある時計を指しながらそう言った。

「あ、本当だ。教えてくれてありがとう、なぎさ君。では、お先に失礼します。ありがとうございました。」

嘉瀬君はそう言って、学生鞄を持った。

「あ、うん。気をつけて帰ってね。」

俺はそう言った。

「靴箱までなら一緒に行って見送るよ。」

そーいちはそう言ったけど、嘉瀬君は

「いえ、ここで大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

と言った。

「また来てね!」

なぎさはそう言った。

嘉瀬君がお辞儀をし、部室を出た後、俺ら3人は自分たちの計画性の無さにため息をついた。…部員になるかわかんないのに、なんで俺までため息ついたんだ?と疑問も浮かんでしまったけど。
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