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1章 We love, because He first loved us.
手荒い挨拶4
しおりを挟む「佐久眞先生ちょうどよかった。
あのベルト、用意しといてくれる?」
僕を捕まえながら会話しだす3人。
会話はわからないが僕のことを話しているらしい。
「私がします。先生は患者を運ぶか連れてくるかしてください」
「あ、はい。」
小さくわかりましたーと答えている佐久眞先生の姿を見ながら、看護師が強い病棟は平和でいいね、とポロっと僕の頭上でつぶやく。
こそこそと、僕に聞こえないように耳打ちで話しかるために近づいてきたこのおおきい男。
「車椅子で移動させるんですか?めっちゃ暴れちゃいますよね」
せっかくの配慮を日本語がわからない僕には必要ないとそのまま返す相手。
「乗せている間に振り切って逃げるだろうね、
佐久眞先生抱っこして運べない?」
あ、いいんだ…みたいな顔をして一瞬僕と目を合わせたけどすぐに逸らし返事をした。
「いや、~まぁイケマスケド…」
「また噛まれそうって?笑」
「はい…」
「噛まれない抱っこの仕方教えてあげるから頑張って」
「…はい、ありがとうございます?」
やっぱこうなるか、と一応の礼を伝えるも疑問符が抜けないような答えを返していた。
「初診終わってたら楽だったんだけど…君、大人しく部屋戻ってくれない??笑」
「………」
嫌そうな顔して無視する僕を面白そうに見ながら、頭に回した手が緩まないくらいの力で、指先だけ動かしてさわさわと撫でてくる。
撫でる手の感触に慣れないうちに圧が強い看護師が戻ってきた。
「先生、ベルト準備できました。」
「ああ、ありがとう。佐久眞先生、後ろで腕捕まえてて」
「こう…ですか?」
やり慣れていないのか指示に従って動く。
もしかしてこの男一番下っ端…
二人っきりになった時に逃げられるかも。
今は大人しくしておいて時期を待とう。
【佐久眞先生side】
國吉先生が掴んでいたこの子の腕を、背中側に回って掴む。
スルッと國吉先生が頭を固定していた手を離した。
さっきはベルトって言ったけど、実は自傷行為予防のためのハーネス。
それだけではない。
脱走や暴れる患者のための拘束具でもある。
普段はあんまり付けたりしないけど、この子には必要だろう。
部屋に戻って大人しくしてたら、すぐ外してあげるから今だけ我慢して欲しい。
つける手順はあまり見られないように、背中側から行う。
柔らかいミトンをはめて、両手を繋ぐ紐を肩幅くらいに調節する。
このままだとお尻から抜けて手が前のほうに行くから意味がない。
ミトンの両手を繋ぐ紐に別の紐を引っ掛けて、首輪に接続して完成!なんだけど…
どんな子もだけど、簡単に付けさせてもらえるわけがなく、前にいる國吉先生が動かないように固定してくれないと一人でつけられないんだよね。
天満先生なんかは自作ですごい拘束方法を編み出してるし、この前なんか亀甲縛り?て言うのを応用してユイトに試してたもんなぁ。
まだ一人でつけられないし他のやり方も知らない。
首輪つける時も危ないから國吉先生に顔を固定してもらって後ろから不意打ちでつけた。
ケイはそれはそれは恐ろしい形相で睨んで抵抗するもんだから、最後は國吉先生が羽交締めするように押さえ込んでいた。
昼間は人目を気にする子も多いから、上にケープを着せてあげることもあるんだけど、今はいいか。
とりあえずなんとかつけられて良かった。
そのまま歩いて戻ってくれたら抱っこしないで済むんだけど。
首輪につけた紐引っ張るのはダメなんだよなぁ。
これはただの持ち手みたいな感じだから、急に引っ張るような力を入れたらすぐに外れる仕様になってて、こう言う時に使えるような実用的なものじゃない。
例えばプレイに使ったり、精神的に不安定な患者のために先生と患者をつなげておいたりとか。
一部の先生はお仕置きに使ってたりする。
まだそんな真似はできそうにないけど、いつかこの患者とする日が来るのかなって想像したらまともに顔を見れなくなった。
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