手折られた天使の黙示録

1章 We love, because He first loved us.

謎の患者1

都心から1時間ほどの郊外。


緑豊かで静かな山間だったここは、2年前「聖フィリア学園」ができた。

DomとSubの子供達が自身の能力をコントロールし、真っ当に生きる術を教える病院兼療養施設である。


小学5年生から高校3年生まで入所でき、最大収容人数はDomSub合わせて90床。年々規模が拡大しており、開業準備期間中の試験運用段階では8床のみだった。

政府の認定を受け、特別な医療控除が受けられると、患者は一時的な入院ではなく高校3年生まで入所する。
今認定を受けているのは10人。

入院費や治療代、食事代は全て免除。
Dom Sub専門の学校へ通うのも助成金がでる。

認定を受けるからには最新の治療薬や設備が使え、積極的な治療を施される。
すべての経過やデータはモニタリングされ、生活の全てを捧げなければならない。







DomとSubの存在が世界的に認知されてから早数十年。

世界各国の第二性の扱いはそれぞれである。



日本は世界から遅れをとるも、最近は著しくDomとSubの権利や迫害に対する賠償問題に着手しており、徐々にではあるがその存在を認め、人としてごく穏やかにくらせる様になった。


しかし、いまだに古い価値観からアップデートされない人間はどこにでもつきもので、見えないところで虐げられているのが常である。


第二性がらみの犯罪や暴力団による海外への人身売買の斡旋など、立場の弱いSubが被害に遭い、生涯にわたって傷を負うこともある。

また、身内でもDomSubが生まれ対応に困り、怪しい宗教団体に預けて、献金と称し高額な金銭を要求するなど、詐欺の実在が報告されている。


第二性が生まれやすい家系があるのも知られており、代々続くお家柄は特にその傾向が強い。

世襲でDomが継ぐなどとその家のしきたりに振り回される子に圧力や、精神的虐待がうたがわれているのも事実である。


「聖フィリア学園」は病院の機能だけではなく、今では第二性に悩む子供のための保護施設としても活用されている。






20:30頃


看護師「天満先生、明日入所予定の患者さんの到着予定、大幅に遅れるらしいです。」

天満「え、、そうなの？もしかして國吉先生乗せた送迎車まだ空港行ってないかんじ？」

佐久眞「さっきもう到着したって連絡来ましたよ。患者が向こうで急変したらしいです。救護ルームで待機ですかね。」

天満「うーん、國吉先生待機となると明日のスケジュール調整しないとなぁ…佐久間先生さぁ、外来か隣の病棟兼任かどっちがいい？」

佐久眞「えっ！そんなどっちもむりですよ‼︎そもそもオレ戦力外なんで‼︎」

天満「やっぱり？笑
タイミング悪いなぁー、しょうがない待機の先生に連絡してくれる？」

佐久眞「待機の先生って、、一色先生じゃないですか！」

天満「うん笑そうそう。あの人ヘルプでうちと隣入ってくれてるんだけど、ヘルプの仕事量じゃ無いよね～」
 「常にいるから常勤だと思われてるし笑」

佐久眞「嫌ですよオレ！明日こそ休みだって喜んでる人にトドメを刺すなんて！しかも今日もヘルプで夜勤の人に！」

天満「じゃあ、俺はもう何度もトドメ刺してるってことになるなぁ笑」