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プロローグ
しおりを挟む「くっ……がはっ!」
ガン!ガシャン‼︎
蛍光灯に照らされて、鈍く光る銀のカートに容赦なく細い身を打ち付け、呼吸が乱れる。
カートにのっていた注射器やら点滴、ガーゼが四方に散乱した。
打ちつけた肋骨と腕の痛みに耐えながら、やっとの事で起き上がると胸ぐらを掴まれ、側にあったベットまで連れられる。
「う゛ぁ、ハァ……ッハァ」
ブンッ── 多数のモニターが一斉に起動した。
最新設備が備えられたこの《実験室》の、どこに、何がつながっているかもわからない。
青白く光るこの広い部屋に放り込まれ、やけに冷たく感じるベッドに、慣れた手つきで手足を縛られた。
「やめろ!離せっ‼︎」
いつの間にか能面の様な死んだ表情の看護師が側に来て、暴れる体をさらにキツく、ベッドにくくりつけた。
手足の拘束を無理やり引きちぎろうと、もがくにつれ息が荒く顔色が悪くなる。
(クソっ、なんでこんな時に!)
今まで手荒に実験に使われたツケが最近になって顕著に現れる様になった。
初めはほんの些細な違和感が、今ではさまざまな不調に襲われ、本来のDomの能力が減っていく感じがする。
忙しない呼吸に緩んだ力が好機と、透明な緑のマスクを装着させられてしまった。
散々着けてきて馴染んだこの匂いから
これはただの呼吸のための酸素マスクでは無いことがわかる。
僕たちが悪魔の薬と呼ぶ、
DomをSubにする薬──
D-セラフィム《 D-Seraphim》が混ぜられている。
「良かったな、これで実験は最後だ。この計画の初期にいたペットはまるで使い物にならなかったが、ックク……ケイ、お前は違った。」
脛まである水色の病衣を肌けさせ、アザや打ち身が目立つ上半身に粟立つ皮膚が危機を感じている。
薄く肋骨が透ける上半身を、男の不健康な手が撫で回す。
いつも以上に気前よく喋るこの男を睨みつけながら、今できる抵抗を試みる。
「これまでの研究費も相当かかっている。なにせ小国の防衛費にまで膨れ上がっているんだ。残った規格外の家畜どもの処分も時期に決定されるだろう。今までいたあいつらの分まで、お前が国に尽くして精算して貰う算段だが、全てはお前の功績次第……」
「今後の活躍に応じてケイ、残った家畜はお前の手駒としてもよし、見捨てるもよしだ。ただし、思った成果が出せない場合は即処分、もしくはまた実験台にでもなってもらおうか、っプ……グハハハッ!──」
目に見えるほどにこの薬の効果が出た者はケイしかいない。
それもまだ発展途上だ。
男が薬が入ったアンプルの首を折り注射器で吸い上げる。
いつもの《D-セラフィム》ではない、見たことのない薬。
認識した瞬間、逃げなければ、と体が警告してくる。
焦って無駄な抵抗をするケイを楽しむ様にわざと見える位置まで注射器を掲げてくる男。
「さぁ、これでお前は完璧なSubだ‼︎」
「っやめろ──‼︎」
グサッ
「ぐぁ゛あああああ‼︎っああ、ヴぁああっ…!ギャァ゛ァ゛‼︎」
針が刺され中の薬剤が体内に入った瞬間、とてつもない体の痛みと急速に体が変えられる様な熱さが全身を襲う。
「ハァ…はぁあッ、うぅ゛…」
「どうだ新しい薬は?試すのはお前が初めてだ。」
「良い結果を期待しているぞ!アハハハッ」
そのままケイは気を失った──
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