ハイツ婚の食卓(5/21更新)

弁当

　ルイは外出が好きではなかった。自分ルールを持っているが故に、外に出れば風が吹いて、埃と塵が飛んできて、人ごみに酔うし、陽が肌を焦がす。己の仕事に必要な事だと理解はしているのだが、そうなると気が重かった。しかし結婚して、その悩みは少し軽減された。
　そっと弁当の蓋を開けた。今日はキャラ弁だ。一昨日観た、まっくろくろすけである。ころんと丸く握られて海苔が巻かれたお握りに、丸く切られたチーズ、その中に更に小さく丸く切られた海苔が貼られて、こちらに向かってウィンクしている。隙間には黒ごまをつけてトトロに変身した鶉の茹で卵や野菜、ウィンナーが串に刺して、おかずとご飯が混ざらないように詰められている。
　紗々波は日帰りの遠出には弁当を作ってくれるのだ。今日は何が入っているのかと開ける瞬間の、わくわくした胸の高鳴りは今でも慣れる事はない。どんな難しい依頼やその為に遠い場所に行く羽目になっても、妻がこうして料理を作って待っていてくれる。それだけで頑張れるのだ。