ちょっと不気味な話(7/24更新)

椅子

　あの椅子、どんな魔法か技術か知らないけど、すごいのよ。カップル、友人、親子……何でもいいけど座ったとするでしょ、中身が入れ替わっちゃうの。立ち上がれば元に戻るらしいけど、たまにそのままになっちゃうのが困りものね。





　ある廃屋に放置されている豪奢な椅子に腰掛けた者は絶命する。とても惨い死因であるのに、酷く安らかな表情を浮かべているので、訪れる者は後を絶たない。 





　椅子を修繕に出したら、おかしなおまけがついてきた。座れないし、日当たりのいい場所を探し回って占拠するし、図々しいヤツめと空っぽの眼窩を睨みつけるが効果はない。





　いやそんな元から困った事したり言ったりする人じゃなかったんですけど。突然自宅前の電柱に椅子を括りつけてこのままにしといてくれって頼みこんできたんですよ。「子供が騒ぐから」ってね、結婚もしてないのに。でもね、確かに椅子の傍を通り掛かると聞こえるんですよ。学校から聞こえるような、甲高い笑い声が。一人や二人じゃない、鬼ごっこでもしてるような……。





　霊感のある人間が調べても何の気配も感じられない。それでも椅子を動かそうとすると、誰かが座っている重さがあるという。