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もし世界中の人間を二つに分けるとしたら、例えば動物に例に挙げてみたりして。
「桃華って……動物に例えると絶対に草食動物……」
「……う?」
一体何処からそんな発想が来たの。桃華は食べかけのサンドイッチを飲み込みながら、まじまじと白雪の長い睫毛に伏せられたオッドアイを見返した。だが肝心の白雪は不躾な視線も気にする事なく、お茶を飲んでいる。美少女なので水筒からお茶を呑む動作でも妙に様になる。桃華は困惑しつつ、口を開いた。もちろん、それは食事のためでなく。
「……あのね? なんで急にそんな話に?」
「別に……何となくそう思ったから……」
「ふ、ふーん?」
白雪は相変わらずの仏面頂だ。相変わらず的を得なくて主旨が判りづらいというか、雲を掴むような会話に、桃華は思わず間の抜けた相槌を打つ。とにかく白雪の話題には脈絡がないのだ。その事は仲間達での暗黙の了解である。つい数十秒前まで独り言やら練習中の歌やらを呟いていたと思ったら、次の瞬間には全く別の会話になっている。それに付いて行くのはかなり骨の折れる事だが、別にスルーしても不機嫌になるわけでもないし、それなりの付き合い(棗ほどでもないが)をしている桃華としては、もうすっかり慣れてしまった。
「……だって、桃華は肉食動物なんてガラじゃない。弱肉強食の世界では真っ先に喰われて生きていけなさそうというか……」
「……あの、白雪ちゃん? 何か何気にすッごく失礼な事あたしに言ってない?」
最もそれは今更だが。白雪の悪気のない(つもりの)毒舌だって、日常茶飯事だ。
「とゆーか、そういう白雪ちゃんも、」
「……そういう私も?」
「う~ん……草食動物のよーな気もするけど、肉食動物よーな気もするね」
桃華はこてんと首を傾げる。さらりと左右均等に結われた金髪が揺れた。
「何それ……ハッキリして……」
他人の一挙一動にあまり興味が無い白雪が珍しく食いついてきたので、暫らく嗜好に耽る桃華の脳裏にフッと浮かんだのは――狼に似たイヌ科の動物の姿だった。名前は忘れてしまったが、確か中央アメリカや北アメリカに分布する動物だった、はず。狼に似ているけど、それよりもやや小型のそれは、確か『草原狼』とも呼ばれていた。
「アレだ」
「……何?」
答えを待つ間、弁当を食べ進めていた白雪が此方を見た。
「名前は忘れちゃったけど、草原にいるね、白雪ちゃんだってテレビとかで観たことあるんじゃない? 絶対あれに似てる。ホント」
「……アレじゃ解らない。自己完結は心の中ですれば……」
草原狼と言う名称は、曖昧なイメージながらも目の前の友人を思い出させる気がした。
「桃華って……動物に例えると絶対に草食動物……」
「……う?」
一体何処からそんな発想が来たの。桃華は食べかけのサンドイッチを飲み込みながら、まじまじと白雪の長い睫毛に伏せられたオッドアイを見返した。だが肝心の白雪は不躾な視線も気にする事なく、お茶を飲んでいる。美少女なので水筒からお茶を呑む動作でも妙に様になる。桃華は困惑しつつ、口を開いた。もちろん、それは食事のためでなく。
「……あのね? なんで急にそんな話に?」
「別に……何となくそう思ったから……」
「ふ、ふーん?」
白雪は相変わらずの仏面頂だ。相変わらず的を得なくて主旨が判りづらいというか、雲を掴むような会話に、桃華は思わず間の抜けた相槌を打つ。とにかく白雪の話題には脈絡がないのだ。その事は仲間達での暗黙の了解である。つい数十秒前まで独り言やら練習中の歌やらを呟いていたと思ったら、次の瞬間には全く別の会話になっている。それに付いて行くのはかなり骨の折れる事だが、別にスルーしても不機嫌になるわけでもないし、それなりの付き合い(棗ほどでもないが)をしている桃華としては、もうすっかり慣れてしまった。
「……だって、桃華は肉食動物なんてガラじゃない。弱肉強食の世界では真っ先に喰われて生きていけなさそうというか……」
「……あの、白雪ちゃん? 何か何気にすッごく失礼な事あたしに言ってない?」
最もそれは今更だが。白雪の悪気のない(つもりの)毒舌だって、日常茶飯事だ。
「とゆーか、そういう白雪ちゃんも、」
「……そういう私も?」
「う~ん……草食動物のよーな気もするけど、肉食動物よーな気もするね」
桃華はこてんと首を傾げる。さらりと左右均等に結われた金髪が揺れた。
「何それ……ハッキリして……」
他人の一挙一動にあまり興味が無い白雪が珍しく食いついてきたので、暫らく嗜好に耽る桃華の脳裏にフッと浮かんだのは――狼に似たイヌ科の動物の姿だった。名前は忘れてしまったが、確か中央アメリカや北アメリカに分布する動物だった、はず。狼に似ているけど、それよりもやや小型のそれは、確か『草原狼』とも呼ばれていた。
「アレだ」
「……何?」
答えを待つ間、弁当を食べ進めていた白雪が此方を見た。
「名前は忘れちゃったけど、草原にいるね、白雪ちゃんだってテレビとかで観たことあるんじゃない? 絶対あれに似てる。ホント」
「……アレじゃ解らない。自己完結は心の中ですれば……」
草原狼と言う名称は、曖昧なイメージながらも目の前の友人を思い出させる気がした。
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