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学童保育所
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「怖い話か……うーん、残念だけど今の俺には思い当たる話がないね。……ああ、そういえば、俺の妹が最近怖い体験をしたんだよ。それで良かったら聞いてくれるかい?」
妹は放課後、友達と隠れんぼで遊ぶ事にした。範囲は学童で使われる離れ屋。見つからないように普段使われていない部屋を探していた。
そんな妹が見つけた空き部屋の押し入れの襖が、カタカタカタと小さく揺れ始めた。妹はそれに少し驚いたものの、押し入れから離れて暫らくの間ジッと様子を見ていた。でも押し入れの襖は変わらずに、かたかたかたと揺れているだけ。だから、妹は押し入れの中にネズミか何か生き物がいるのかも知れないと思って、確かめようと押し入れの襖を開けた。
そうしたら、一面、泥のような茶色だった。蒲団どころか天井も壁も見えなかった。驚いて襖に手をかけたまま思わず固まっていれば、その茶色いものは嫌でも目に入る。妹はその時、それが動いている事に気付いた。
それに気付いた妹は、視線を上の方に向けた。そうしたら上段に、見知らぬ女性が横たわっていた。傷だらけの青白い顔で、目はどんよりと濁っている。見るからに死体といった風で、唖然とした妹に向けて、急にその目が動いて、笑った。ニタァッというそんな擬音がぴったりの笑顔があんまりにも不気味で、妹はすぐに襖を閉めてしまった。
その時に指に絡まった女性のしめった髪の感触が、妹は今でも忘れられないそうだ。
「……まあ、こんな話さ、怖かったかい? えぇ? 気になることがあるのかな、話の中におかしなところでも……え、違う? 他に、何か? この部屋の押し入れからはみ出している、あの茶色は何か、って? ふふ……そんなに気になるのなら、開けて確かめてみたらいいじゃないか……もともとはアンタのだろう?」
背後の障子が、がたりと大きく震えた。
妹は放課後、友達と隠れんぼで遊ぶ事にした。範囲は学童で使われる離れ屋。見つからないように普段使われていない部屋を探していた。
そんな妹が見つけた空き部屋の押し入れの襖が、カタカタカタと小さく揺れ始めた。妹はそれに少し驚いたものの、押し入れから離れて暫らくの間ジッと様子を見ていた。でも押し入れの襖は変わらずに、かたかたかたと揺れているだけ。だから、妹は押し入れの中にネズミか何か生き物がいるのかも知れないと思って、確かめようと押し入れの襖を開けた。
そうしたら、一面、泥のような茶色だった。蒲団どころか天井も壁も見えなかった。驚いて襖に手をかけたまま思わず固まっていれば、その茶色いものは嫌でも目に入る。妹はその時、それが動いている事に気付いた。
それに気付いた妹は、視線を上の方に向けた。そうしたら上段に、見知らぬ女性が横たわっていた。傷だらけの青白い顔で、目はどんよりと濁っている。見るからに死体といった風で、唖然とした妹に向けて、急にその目が動いて、笑った。ニタァッというそんな擬音がぴったりの笑顔があんまりにも不気味で、妹はすぐに襖を閉めてしまった。
その時に指に絡まった女性のしめった髪の感触が、妹は今でも忘れられないそうだ。
「……まあ、こんな話さ、怖かったかい? えぇ? 気になることがあるのかな、話の中におかしなところでも……え、違う? 他に、何か? この部屋の押し入れからはみ出している、あの茶色は何か、って? ふふ……そんなに気になるのなら、開けて確かめてみたらいいじゃないか……もともとはアンタのだろう?」
背後の障子が、がたりと大きく震えた。
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