異類婚のススメ(7/7更新)

狂言巡

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体質

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 花園朱美の友人である苧野琴菊はちょっと不思議な体質の持ち主だ。
 彼女が家に来ると、妙な緊張感が漂う。全ての物が騒めき、人間や動物の形をした、つまり目のある者は友人を凝視する。目のない物も、恥ずかしがったり、ちょっとでも意識を引こうとする。つまり、いるだけでその場の「物」を魅了するのだ。
 弟がいつだったか壁にかけていったお面は笑わせたいのか変顔を始め、弟の恋人から土産に貰った人形はくるくると踊り、祖母が作ってくれた編みぐるみ達はぴょんぴょん跳ねていた。バイクの模型はドリフトを決める。目覚まし時計の文字盤にいる少女は恥ずかしがって顔を手で隠してしまった。シールをためて引き換えたカップに描かれた猫は、にゃあんと活字の鳴き声をあげる。友人が譲ってくれたカレンダーのイケメンが頬を染めつつもカッコよくウインクをキメて琴菊にアピールをし出したのを見て、朱美は驚きを通り越して呆れたような表情になる。
 だが、その騒めきも一瞬の事だ。理由は二つある。一つ、彼らはまだ新参の付喪神。人間でいえば生後何か月程度の赤ちゃんだ、行動範囲など知れている。またみんな元の位置で静かに置物へと戻っていく。集まっていた視線もすぐに霧散し、物は物としての存在意義を果たし始めた。

「今日もモテモテだったな」
「悪い気はしないけど……」

 そしてもう一つの理由。
 琴菊がいつも鞄に着けている根付。由緒ある木から作られた(山精とは合意済み)一品だそうだ。上には上がいるのである。
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