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曖昧コピーキャット
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自習中にそれは起こった。というか原因が叫んだ。
「白髪ちゃんの彼氏、寝とっちゃった☆」
困ったちゃん。持て余し者。鼻つまみ者。DQN。
そんな言葉をほしいままにする、クラス一の馬鹿女が大声でそれを言い出した時は全員、呆気にとられた。当人の縁は何の話? という感じでその脳内に腐った漬物を詰め込んでいそうな女を見ていた。そんな淡白な反応を見て、何を思ったのか馬鹿女はドヤ顔でニヤニヤとし笑っていた。……何というか、どうしてそう人の顔色を自分の都合よく解釈できるのだろうか。
縁の友人である輝としては、この子ったら縁ちゃんへの僻みをため込みすぎてついに頭がおかしくなったのね……などと思っていた。
そもそも、縁には彼氏はいない。既婚者である。まさかこんな馬鹿に真実は言えない。でもそれはクラス全員(馬鹿女除く)が知っているわけで。
この馬鹿女は、こいつ私より美人から気に食わないとかいう、しょーもない理由で靴隠しとかわざとぶつかってプリントばら撒くとか、縁に一方的にいちゃもんをつけてはよく絡んできた。当人は適当にあしらって相手にしていなかった。だから、誰も信じないような嘘でも吐かないとやっていけなくなったかもしれないと思った。全く努力の無駄遣いしている。
「――なんて事があったのよねえ」
「相変わらずトラブルに恵まれてるね縁さん。ついでに男の趣味も悪いよね」
「どこが?」
「だって慧創先生だよ? 偏屈と筋肉と説教でできているような人だよ? 本当にどこがいいの? 癒しゼロどころかマイナスだよ」
「君の眼は節穴? 先生なんて砂糖とスパイス、素敵な何かでできているような方じゃない! 昨日だって、私が犬の耳と尻尾をつけて、『わんこと私の10の約束』読み上げるだけで泣き崩れていたし!」
「……やっぱり趣味が悪いよ縁さん……」
「……いや、その、可愛くてつい……」
「ていうか普段どんな風に過ごしてんの縁ちゃん……」
そんな感じで部活の準備中に話をしていたら、今夕依が入って来た。
「みんな、今夕依ちゃんもぎたて速報やで~」
「どうしたの今夕依ちゃん」
「縁ちゃんと真実くんと同じクラスのびっちちゃんに他校の彼氏が出来たらしいねん。迎えに正門に来てるからって観察しに行ったら、めっちゃ長身のイケメン! これって大変やん!」
「ああ……もしかして例の私の彼氏ってヤツ……?」
「あえあ? 何かあったん?」
不思議そうな顔をしている今夕依ちゃんに、今日の自習中に起きた話をする。
「その子、縁ちゃんの関係者とかうそぶいて、びっちちゃんに近づいたんじゃない?」
今夕依はそう言った。あの馬鹿女は、ずっと黙ってさえいればモテるタイプだと男子が話をしているのを聞いていた輝は、彼女の話に納得した。
それからどうなったかいうと……悪化した。馬鹿女は縁が居る時に限ってその彼氏との惚気話、主にセクロスの時の話をするようになった。しかも大声で……。でも、そこは流石は縁のスルーパワー。完全にその馬鹿女はガン無視して過ごしていた。
「カマトトぶってんじゃねぇよマジキモイ」
縁の超無関心な態度が気に入らなかった馬鹿女は、机の上にあった縁の筆箱を投げ付け、職員室に呼びだされていた。絵にかいたような馬鹿だ。
そして数日後、ピタリとその彼氏の話はなくなった。馬鹿女が学校に来なくなったからだ。だからといって大して輝も縁も気にも留めなかった。元から遅刻無断欠席が多かったし、縁に嫌味を言う為に登下校しているような生徒だったのだ。毎日毎日、下世話な話を大声で一歩的にしてこられる不愉快さから解放されて、クラスどころか学年全体が平穏になった。だがしかし、先生達の方はそうは問屋が卸さない。
何でも馬鹿女の両親が職員室に怒鳴り込んできて大騒ぎになったらしい。所謂モンスターペアレントというやつだ。学校にクレームを入れる前に警察に捜索届を出せばいい話なのだが、どうも裏でやばい事をしていてバレそうだから警察に連絡したくなかったらしい。悪い意味で似たもの親子だったのだろう。
そんなわけで、何故か担任の慧創教諭が馬鹿女の行方探しをする羽目になった。彼は同級生がやっている探偵事務所に捜索の依頼をした。それから数日後に、見つかった。……無言の帰宅というやつだ。
かなり惨たらしい状態で発見されたらしい。躰中がこう、おかしな方向に捻じ曲げられていたらしい。結局、縁の彼氏を自称していた、もとい馬鹿女の彼氏さんは何だったんだという謎は残った。
「白髪ちゃんの彼氏、寝とっちゃった☆」
困ったちゃん。持て余し者。鼻つまみ者。DQN。
そんな言葉をほしいままにする、クラス一の馬鹿女が大声でそれを言い出した時は全員、呆気にとられた。当人の縁は何の話? という感じでその脳内に腐った漬物を詰め込んでいそうな女を見ていた。そんな淡白な反応を見て、何を思ったのか馬鹿女はドヤ顔でニヤニヤとし笑っていた。……何というか、どうしてそう人の顔色を自分の都合よく解釈できるのだろうか。
縁の友人である輝としては、この子ったら縁ちゃんへの僻みをため込みすぎてついに頭がおかしくなったのね……などと思っていた。
そもそも、縁には彼氏はいない。既婚者である。まさかこんな馬鹿に真実は言えない。でもそれはクラス全員(馬鹿女除く)が知っているわけで。
この馬鹿女は、こいつ私より美人から気に食わないとかいう、しょーもない理由で靴隠しとかわざとぶつかってプリントばら撒くとか、縁に一方的にいちゃもんをつけてはよく絡んできた。当人は適当にあしらって相手にしていなかった。だから、誰も信じないような嘘でも吐かないとやっていけなくなったかもしれないと思った。全く努力の無駄遣いしている。
「――なんて事があったのよねえ」
「相変わらずトラブルに恵まれてるね縁さん。ついでに男の趣味も悪いよね」
「どこが?」
「だって慧創先生だよ? 偏屈と筋肉と説教でできているような人だよ? 本当にどこがいいの? 癒しゼロどころかマイナスだよ」
「君の眼は節穴? 先生なんて砂糖とスパイス、素敵な何かでできているような方じゃない! 昨日だって、私が犬の耳と尻尾をつけて、『わんこと私の10の約束』読み上げるだけで泣き崩れていたし!」
「……やっぱり趣味が悪いよ縁さん……」
「……いや、その、可愛くてつい……」
「ていうか普段どんな風に過ごしてんの縁ちゃん……」
そんな感じで部活の準備中に話をしていたら、今夕依が入って来た。
「みんな、今夕依ちゃんもぎたて速報やで~」
「どうしたの今夕依ちゃん」
「縁ちゃんと真実くんと同じクラスのびっちちゃんに他校の彼氏が出来たらしいねん。迎えに正門に来てるからって観察しに行ったら、めっちゃ長身のイケメン! これって大変やん!」
「ああ……もしかして例の私の彼氏ってヤツ……?」
「あえあ? 何かあったん?」
不思議そうな顔をしている今夕依ちゃんに、今日の自習中に起きた話をする。
「その子、縁ちゃんの関係者とかうそぶいて、びっちちゃんに近づいたんじゃない?」
今夕依はそう言った。あの馬鹿女は、ずっと黙ってさえいればモテるタイプだと男子が話をしているのを聞いていた輝は、彼女の話に納得した。
それからどうなったかいうと……悪化した。馬鹿女は縁が居る時に限ってその彼氏との惚気話、主にセクロスの時の話をするようになった。しかも大声で……。でも、そこは流石は縁のスルーパワー。完全にその馬鹿女はガン無視して過ごしていた。
「カマトトぶってんじゃねぇよマジキモイ」
縁の超無関心な態度が気に入らなかった馬鹿女は、机の上にあった縁の筆箱を投げ付け、職員室に呼びだされていた。絵にかいたような馬鹿だ。
そして数日後、ピタリとその彼氏の話はなくなった。馬鹿女が学校に来なくなったからだ。だからといって大して輝も縁も気にも留めなかった。元から遅刻無断欠席が多かったし、縁に嫌味を言う為に登下校しているような生徒だったのだ。毎日毎日、下世話な話を大声で一歩的にしてこられる不愉快さから解放されて、クラスどころか学年全体が平穏になった。だがしかし、先生達の方はそうは問屋が卸さない。
何でも馬鹿女の両親が職員室に怒鳴り込んできて大騒ぎになったらしい。所謂モンスターペアレントというやつだ。学校にクレームを入れる前に警察に捜索届を出せばいい話なのだが、どうも裏でやばい事をしていてバレそうだから警察に連絡したくなかったらしい。悪い意味で似たもの親子だったのだろう。
そんなわけで、何故か担任の慧創教諭が馬鹿女の行方探しをする羽目になった。彼は同級生がやっている探偵事務所に捜索の依頼をした。それから数日後に、見つかった。……無言の帰宅というやつだ。
かなり惨たらしい状態で発見されたらしい。躰中がこう、おかしな方向に捻じ曲げられていたらしい。結局、縁の彼氏を自称していた、もとい馬鹿女の彼氏さんは何だったんだという謎は残った。
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