男女比率がおかしい世界の話(7/28更新)

ピアス

「ピアスの穴、安定してきたな」

　耳に触れるとびくりと躰を震わせた恋人に思わず笑いそうになって、機嫌を損ねるわけにはいかないから飲み込んだ。それでも何となく伝わったらしく、キッと睨み上げられた。マサミは勝手に触って悪いと囁いた。

「そんな楽しそうに言われても、説得力の欠片もないわよ！」

　シオリはどこか悔しそうに言う。一応頬を膨らませて怒ったふりをしたいのだろう。とてもそうは見えない事は自分が解っていながら、羞恥を発散する為に、擬態を続ける。恋人は手を伸ばして、ムニッとマサミの頬を軽く引っ張った。その小さな手を頬から離し、引き寄せる。触れ合った前髪、近くなった瞳。反射的に閉じられた瞼に、マサミは小さく音を立ててキスを落とす。