26 / 31
懊悩呻吟
しおりを挟む
思うんだ……。もし誰にも干渉されなかったら、どんなにいいだろうって。一喜一憂する空しさがなくなったら、どんなに楽だろうって。僕達は温かい、安らかな夢を見て眠り続ける。その幸せを思うんだ。でもね、ときどき……それは本当に幸せなのかなって余計虚しくなって。僕は違うってわかってるんだ。わかってるけど理解できない。辛いのに。哀しいのに。痛いのに。疲れるのに。苦しいのに。嫌いなのに。どうしてこれが幸せだとわかってるの?
傷付くじゃないか。泣きたくなるじゃないか。投げ出したい。忘れたい。消えてしまいたい。生まれてこなければよかったかもしれない。そうすれば、強くなくていいし、弱くなくていいし。何もなくていいし。僕の存在がない世界。何もない世界。それでよかった。そう思ったら泣けてきた。自分の考えに自分で傷ついてる。バカだなと思って自嘲する。
風が吹いて、僕の頭上の木の葉が揺れて舞い散った。僕も、僕の座っているベンチも、地面も全て覆い尽くす。だんだん赤や黄色や茶色に染まって、溶けて、全部一緒くたになって……。目を閉じれば自身の消え行く感覚に浮遊した。原子単位で拡散し、空気の分子に紛れて行く。
「儚いのは仕方がないわ。『人』の『夢』……なんだもの」
生きるには、強さが必要不可欠だ。夢を持つ強さ。未来の夢。描いた夢がどんな現実になっても、それを受け入れること。……どうせ、受け入れるしかないんだけれど。僕は泣かずにいられただろうか。夢は儚いと、たったそれだけで割り切れたの?
今の君は氷のようだと言われた。泣くならちゃんと泣けって。僕が泣いてる? おかしいな。ただ、やけに晴れ渡った頭上の青空を眺めていただけだったのに。太陽の光とか、控えめに浮いている白い雲、一面の空色。眩しくて、滲んで、ぼやけて。溶けていく躯。溶けていく声。溶けていく空気。後悔はしていないでしょ? やれるだけの事はやったよね? 頑張ったのを知ってる。みんなそうだった。だから儚くて仕方がないとか言わないで。こういうとき、泣けないのは一緒。泣いてしまえば楽になるかもしれないのにね。僕は泣かなかった。
学校に戻ったら、ああ、ホントに、僕達負けちゃったんだな、終わっちゃったんだなって思って、だから空を見上げた。見渡す限りの青空を。それがいけなかったのかな? それともよかったのか。慰めるために言ったの? 苦笑しながら、儚くて仕方がないって。
「梅ちゃん……部屋、貸してくれないかな?」
「……棗ちゃん」
まだ泣いる人間が突然押し掛けて勝手に入ってきて、迷惑だっただろうね。もしかしたら一人で泣いていたかもしれないのに。
「ヒバリがさ、うるさいんだ……」
「…………」
「泣きたいときは思いっきり泣けって……僕は泣きたいわけじゃないのに」
「……そう、どうぞ入って」
とにかく静かになりたくて、でも温かいところにいたくて。よくわからないけどそんな気分だった。
「……泣いているの?」
思い出したのかもしれない。そういう記憶を。それまでの記憶を。それからの記憶を――。
「……泣いてないよ」
「棗ちゃん……」
「……ごめん、もう少し、大丈夫だから」
誰にも干渉されなかったら寂しいよね。喧嘩してごまかされてもいいと思うんだ。いろいろ悩んでも、同じ悩みを持ったり悩みを話せる対象がいるのなら。生きるのは楽しい事だってわかってる。人の夢は儚いと言ったね? でも未来はいつも側にあるんだ。儚いとは思わない。むしろ頑なで、現実になった未来はどうしたって変わらない。
儚いんじゃなくて、短いんだよ、夢を見る時間は。短いけれど元からなかったように消えたりしない。そういう現実として残るんだ。嘘でも言わないで。それは余計に自分を傷付けるだけ。ホントは解ってるんだよね? だからあの夜、泣いてたんだ。みんな気付いてなかったみたいだけれど。
傷付くじゃないか。泣きたくなるじゃないか。投げ出したい。忘れたい。消えてしまいたい。生まれてこなければよかったかもしれない。そうすれば、強くなくていいし、弱くなくていいし。何もなくていいし。僕の存在がない世界。何もない世界。それでよかった。そう思ったら泣けてきた。自分の考えに自分で傷ついてる。バカだなと思って自嘲する。
風が吹いて、僕の頭上の木の葉が揺れて舞い散った。僕も、僕の座っているベンチも、地面も全て覆い尽くす。だんだん赤や黄色や茶色に染まって、溶けて、全部一緒くたになって……。目を閉じれば自身の消え行く感覚に浮遊した。原子単位で拡散し、空気の分子に紛れて行く。
「儚いのは仕方がないわ。『人』の『夢』……なんだもの」
生きるには、強さが必要不可欠だ。夢を持つ強さ。未来の夢。描いた夢がどんな現実になっても、それを受け入れること。……どうせ、受け入れるしかないんだけれど。僕は泣かずにいられただろうか。夢は儚いと、たったそれだけで割り切れたの?
今の君は氷のようだと言われた。泣くならちゃんと泣けって。僕が泣いてる? おかしいな。ただ、やけに晴れ渡った頭上の青空を眺めていただけだったのに。太陽の光とか、控えめに浮いている白い雲、一面の空色。眩しくて、滲んで、ぼやけて。溶けていく躯。溶けていく声。溶けていく空気。後悔はしていないでしょ? やれるだけの事はやったよね? 頑張ったのを知ってる。みんなそうだった。だから儚くて仕方がないとか言わないで。こういうとき、泣けないのは一緒。泣いてしまえば楽になるかもしれないのにね。僕は泣かなかった。
学校に戻ったら、ああ、ホントに、僕達負けちゃったんだな、終わっちゃったんだなって思って、だから空を見上げた。見渡す限りの青空を。それがいけなかったのかな? それともよかったのか。慰めるために言ったの? 苦笑しながら、儚くて仕方がないって。
「梅ちゃん……部屋、貸してくれないかな?」
「……棗ちゃん」
まだ泣いる人間が突然押し掛けて勝手に入ってきて、迷惑だっただろうね。もしかしたら一人で泣いていたかもしれないのに。
「ヒバリがさ、うるさいんだ……」
「…………」
「泣きたいときは思いっきり泣けって……僕は泣きたいわけじゃないのに」
「……そう、どうぞ入って」
とにかく静かになりたくて、でも温かいところにいたくて。よくわからないけどそんな気分だった。
「……泣いているの?」
思い出したのかもしれない。そういう記憶を。それまでの記憶を。それからの記憶を――。
「……泣いてないよ」
「棗ちゃん……」
「……ごめん、もう少し、大丈夫だから」
誰にも干渉されなかったら寂しいよね。喧嘩してごまかされてもいいと思うんだ。いろいろ悩んでも、同じ悩みを持ったり悩みを話せる対象がいるのなら。生きるのは楽しい事だってわかってる。人の夢は儚いと言ったね? でも未来はいつも側にあるんだ。儚いとは思わない。むしろ頑なで、現実になった未来はどうしたって変わらない。
儚いんじゃなくて、短いんだよ、夢を見る時間は。短いけれど元からなかったように消えたりしない。そういう現実として残るんだ。嘘でも言わないで。それは余計に自分を傷付けるだけ。ホントは解ってるんだよね? だからあの夜、泣いてたんだ。みんな気付いてなかったみたいだけれど。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる