後輩のラブ事情(5/21更新)

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　先輩を動物に例えるなら『猫』だと思う。気紛れでポケッとしているかと思うと、時には鋭くしなやかで狡猾。愛らしい動作で人に懐きながらもその実。本当の姿を見せてはいない。適度に距離を置きつつ、適度に友好的に。あぁ、ほら。やっぱり猫みたいだ。それも先輩の場合は絶対にペットショップから引き取られてきたような、ずっと人間に保護されてきた猫じゃない。野良猫だ。おまけにかなり要領のいいヤツ。
　ほら、あれだ、飼われてはいないけれど、餌をくれる店や家を何軒か知っていて、あっちにフラフラこっちにフラフラしながらも餌に困る事はないってヤツ。大体そう言う餌をくれる人間は、飼えないけど餌をあげて一時的な滞在くらいなら……って人が多いのだと思う。もちろん俺はよく知らないんだけども。愛情の押し付けはしない。それがきっと猫も心地良い。飼うでもなく飼われるでもなく。それはある意味対等な関係と言えるんじゃないだろうか。
　先輩は自由な野良猫だ。飼い猫と違って危険な事も多いんだろうけど、それでも旅をやめようとしない。ある種のプライドと気高さに満ち溢れた孤高の獣。その全てを真っ向から見据えた瞳には、この世界がどんな風に映っているんだろう。

「ねーねー、湯浅くんー！　ちょぉ聞いてよ」
「何スか？」
「昨日帰る時なぁ、オレンジ色の猫を見たんよねぇ」
「オレンジ色？」
「そっ！　珍しやろ？　ええもんみたわぁ」
「……それ、オレンジって言うより赤茶色なんじゃ」
「何となくオレンジっぽかったんやて。ほら、蜜柑とお揃いやし」
「…………」
「ん？　どしたん湯浅くん？」
「……どっちかって言うと、オレンジ色の猫はアンタだろ」
「……は？」

　ぱちくりと目を瞬かせる先輩に、俺は思わず吹き出した。