推し活のススメ・夜光(1/29編集)

血は争えない２【子世代】

　朔夜にとって、あの求婚は本気であった。たまたま自分の横を通り過ぎた少女。一目見た瞬間に吸い寄せられた。目が合ったわけでも言葉を交わしたわけでもないのに。透き通るように小さな白い顔、癖の強い黒髪も星屑を散らした夜色の瞳、ふっくらとした赤い唇……。どれもこれもが頭から離れない。自分の背丈の半分より少し高いくらいの背丈で、抱き上げた時に触れた手足は華奢で柔らかい。まるで全て自分の為に丹精された美しい人形のように愛らしく思えて、目が離せない。
　早ければ初潮を迎えていそうだが、まだまだ女としての魅力を持つような年ではない小娘メスガキだというのに、酷く欲を煽って抱き締めて甘やかしてやりたくなるし、グチャグチャにしてやりたくもなる。あの似ても似つかない男親(ゴリラのような大男と死神のような陰気臭い男、どちらが彼女の父なのかは知らないしどうでもいい)から奪って、自分の檻に閉じ込めてしまいたくなる衝動を抑え込むのに苦労する程に。つまり朔夜は、あの美空という少女の心も体も全てが欲しいのだ。
　何をしていてもふとした瞬間彼女が思い浮かぶし、気になるのだ。何よりも厄介なのは胸に爪を立てられるような痛みがたびたび起こった。まさかこれは新手の呪いか病なのかと主治医に相談したところ、真っ赤になった。

「春宵さん、朔夜さんがついに……！」

　何故か今は亡き保護者の名前を出しながら感動しているところに、美空への感情を話すと「それは、愛があっても犯罪アウトです。せめて五年は待って下さい！」と蒼白で制止される事となった。