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屋外授業終了後。グラウンド脇のベンチにぐったりと座り込んで、心地良さをとっくに通り越した疲労感に身を委ねて女生徒は目を閉じていた。
「クロエちゃーん?」
のんびりした声が、文字通り降ってくる。ちょっと相手をするのが面倒臭く思えて返事をしないと、もう一度。
「くーろーえーちゃーん。生きちゃーるよね?」
「んー」
歌うように呼ばれて、クロエは億劫そうに目を開ける。背後から覗き込んできた渚が、ニコニコと笑いながら可愛いクマが描かれた缶を差し出した。
「どーぞ、勝利の味を」
「んー」
『舞鶴と飛鳥の親友ダブルスに勝ったらジュース奢るぜ』
そう言い放った奏はどうやら逃げなかったらしい。よく冷えたお茶の缶を受け取って、運動で熱が集まった額に当てると、ホウッと息が漏れた。
「でもな、ぶっちゃけ勝てるとは思わんかったわぁ」
「んー」
「クロエちゃん、さっきから『んー』しか言ってへんよ?」
「うん」
既に半分以上中身の減ったペットボトルをぶら下げた渚が、ベンチを回り込んでクロエの隣に座る。
「ほんまギリギリやったわぁ」
「でも勝った」
「せやねぇ」
「……奏、後で大変」
「うん、舞鶴ちゃんらに賭けの対象にしたの、きっとバレちゃーるわ」
「……『Who killed Cock Robin? I,said the Sparow,With my bow and arrow.I killed Cock Robin.』」
「それマザーグースやっけ? 風流だねぇ」
真夏のグラウンドでマザーグースを歌う事に風流も何もないだろう。そんな指摘をしてくれる人間はこの場におらず、そのフレーズをもう一度繰り返してからクロエは缶を開ける。一気に半分ほど飲み干したそれは、既に温くなり始めていた。
「クロエちゃーん?」
のんびりした声が、文字通り降ってくる。ちょっと相手をするのが面倒臭く思えて返事をしないと、もう一度。
「くーろーえーちゃーん。生きちゃーるよね?」
「んー」
歌うように呼ばれて、クロエは億劫そうに目を開ける。背後から覗き込んできた渚が、ニコニコと笑いながら可愛いクマが描かれた缶を差し出した。
「どーぞ、勝利の味を」
「んー」
『舞鶴と飛鳥の親友ダブルスに勝ったらジュース奢るぜ』
そう言い放った奏はどうやら逃げなかったらしい。よく冷えたお茶の缶を受け取って、運動で熱が集まった額に当てると、ホウッと息が漏れた。
「でもな、ぶっちゃけ勝てるとは思わんかったわぁ」
「んー」
「クロエちゃん、さっきから『んー』しか言ってへんよ?」
「うん」
既に半分以上中身の減ったペットボトルをぶら下げた渚が、ベンチを回り込んでクロエの隣に座る。
「ほんまギリギリやったわぁ」
「でも勝った」
「せやねぇ」
「……奏、後で大変」
「うん、舞鶴ちゃんらに賭けの対象にしたの、きっとバレちゃーるわ」
「……『Who killed Cock Robin? I,said the Sparow,With my bow and arrow.I killed Cock Robin.』」
「それマザーグースやっけ? 風流だねぇ」
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