黒狼夫婦の事情(1/12更新)

狂言巡

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鷹の箱庭2

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 ――何とまあ、驚かされる。外は息が凍てつく程の真冬だというのに、ガラス張りの中は暖かいを通り越して真夏のように暑かった。見渡せばシダや蘭、何やら真白の見た事のない植物が植えられていて、やはり見た事のない奇怪な色の大きな鳥が奇声を発している。当然、中にいた夫は、いつものような折り目正しい三揃いなど着込まず、とても軽装だ。珍しいと思った。

「素敵な温室コンサバトリーですね」
「造られた時は最新鋭だったけど、今は古いだけの物さ。何十年も経っているから、燃費が悪くてね」

 そう笑いながら言う世鷹に黒猫は唖然として言葉も無い。人知の業とは到底思えぬ、不思議な空間。外から来たまま着込んだままの姿の黒猫に、世鷹は上着を脱いだ方がいいと促し、更に冷たいカフェラテを勧めた。黒猫の顔は、入室から数分も経たない内に林檎のように赤く火照っている。

「不思議ですね、外はまるきり冬で、タイプスリップしたみたい」
「貴族趣味だね。わざわざ温室を造って、真冬に冷たいドリンクで乾杯する贅沢。……けど、これが意外と楽しいんだ」
「そう、ですね」
「だろう?」

 お互いに表情を弛めながらグラスを交わすと、奇妙な色の鳥が大きな声で鳴いた。
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