後輩の食事情(5/21更新)

狂言巡

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バーベキュー

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「今回の作品から新人が参加する事になった」

 監督がドラマ『青春は甘くない』収録現場に連れてきたのは、以前起こった『こっくりさん騒動』の被害者の一人であり、有名カメラマンの先輩の口添えで、いつの間にか新人モデルに仲間入りした淡島渚という女子大生だった。小柄で童顔の彼女は、制服に着替えただけで何処にでも居そうな女子高生の出来上がりだ。

「というわけで今日から撮影に参加する淡島くんだ」
「よろしくお願いします」

 淡島はぺこりと頭を下げる。「淡島ちゃんだ久しぶりー」や「こちらこそヨロシクー」等と声が返されるのに一つ一つ返事しながらも、淡島の意識はどうしても別のところに持っていかれてしまっていた。目の前には教室の撮影セット。その中央に鎮座するのは――室内にも拘らずもうもうと煙を立てるバーベキューセット。

「……何で焼肉してはるんですか?」
「夏バテ対策です」
「な、なるほど……」

 淡島はタレ(先輩タレントの自家製らしい)の入った器を受け取りながら、このノリについていけるだろうかと早くも不安になっていた。

(先輩、噂以上に変な仕事場でした!)
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