後輩の夜事情(2/5更新)

確認

「まだ納得していないのか」

　熊野は髪を拭いていたタオルを首にかけると、ベッドのど真ん中で転がっている渚へゆっくりと近づいていく。そしてベッドの端へ腰かけ、渚の目の前に広げてあった週刊誌を奪い去る。

　「よくもまあこんな嘘八百を」

　冷えた目でその紙面を眺め、底冷えする声で呟いた。イケボなので猶更迫力がある。ぐるぐると週刊誌を丸めると、それを部屋の隅に設置されていたゴミ箱に向けてほうり投げる。それは綺麗な放物線を描き目標へと収まった。どうやら足だけでなく手のコントロールもなかなかのようだ。

「文字は嘘八百でも、油断しちゃーるからそんなん撮られるんや」

　渚は撮られた写真がとにかく気に入らないだけだ。

「渚、何度も説明しただろ？　それは――」
「もう納得しちゃーるよ。あの女の人は同じ事務所の女優さんの妹さんで、泰司くんはたまたま駐車場に送ってっただけて」

　つい先程までボディランゲージ(意味深)で滅茶苦茶納得させられたんやけど――淡島は心の中で悪態をつく。その証拠だろうか、淡島の体の至るところには赤い花が散らばっていた。足の付け根辺りは特に集中的につけられた。何も知らない人間が見たら、病気の可能性を視野に入れる程の鬱血だ。