暁の食卓(2/28更新)

朝ラーメン

　券売機を使うラーメン屋に来るのは久しぶりだった。ヒカルと和良はカウンターの端を陣取る。厨房から一番近いので、スープの香りとモウモウと立ち込める湯気が顔に迫ってくる。

「お腹は減ったぁ」
「そうだね」

　つい先程まで、喧嘩かと錯覚する程お互いを貪り合っていた雰囲気は一片も残っていない。ただ、情事の後の気怠さと空腹が包んでいる。やがて、シンプルな黄色い細麺の豚骨ラーメンと塩ラーメンが出てきた。二人して割箸を捧げるように手を合わせて啜り始める。温かさとは裏腹に自分の鼻先や頬が、相当冷えていたのを実感する。何故かそれが少し物悲しかった。赤い揚げ玉は初めて食べた。辛いが悪くない。無言で全てを食べ終えた頃には、やや晴れた心地になって、隣のメスダヌキに優しく出来そうな気がした。