暁の食卓(2/28更新)

ゼリー

　雙六の家へ入り浸る事へのヒカルの言い分としては、どうしようもない彼の料理への才能の欠落にある。毎日インスタントや惣菜生活はおろか、挙句の果てにサプリ生活をしようとしていた恋人を止めないわけがない。雙六の食生活はヒカルが支えていると言っても過言ではないが、そうでもない日だってある。
　例えば、お互い荒い息を吐く夜だとか。汗だくでどちらも素っ裸。ウェットティッシュとタオルで清め合った後、おもむろに二人で冷蔵庫を漁る。長方形のビニール袋に密封された、薄く色付いた甘い塊。

「甘いなぁ」
「うん」

　二人で無心にゼリーを吸い込む。第三者から見たら、大層お間抜けな光景かもしれない。それでもヒカルと雙六は幸せだったし、今はそれ以上の事を望む事はなかった。