17 / 20
番外編 近所
しおりを挟む
近所に『たうふ邸」と呼ばれる屋敷がある。週に一度、一丁の豆腐が必ず届けられ、返品はできず、口にすれば三日は腹痛が続く。屋敷の主人が子供の頃、豆腐が好物の同級生を執拗にからかった心当たりがあるが、真相は不明。供養の為の豆腐塚もある。
通勤途中に通り過ぎる、こじんまりとしたアパートの最上階からセーラー服の美少女が小さく手を振ってくれるのが数少ない俺の癒しだ。
「ねえあのスーツのお兄さん、何で毎日ボロアパート見上げてはニヤニヤしてんだろうね?」
「ベランダの案山子が好きなんじゃない?」
隣の家が井戸に湧いた赤錆びた水のような液体しか飲まなくなり、常に独特の臭気が漂って我が家を含め近隣の住人全員が閉口している。それでも抗議できないのは、あの家と一家に近付くとひたすら庭の美しさを称賛して話が終わってしまうから。どんな木や花が植えられている事すら誰も説明できないのに。
亡くなった隣人の家の住人の入れ替わりは激しい。何でも家の中でしょっちゅう残影が見えるんだってさ。隣人の俺からしちゃ、一度も家の中に入ってないのに。あ、反復横跳びしてる。
ベランダで煙草を吸っていた夫が突然ブッと噴き出した。
「あれだけ『歩行の際はお気を付けて』という看板が並んでるのにペチャクチャ騒ぎながら自撮りに夢中なパリピ気取りの女ども、皆仲良く転んで花になったぜ」
んもー今月に何人目よ。掃除当番近いから面倒だわ。
通勤途中に通り過ぎる、こじんまりとしたアパートの最上階からセーラー服の美少女が小さく手を振ってくれるのが数少ない俺の癒しだ。
「ねえあのスーツのお兄さん、何で毎日ボロアパート見上げてはニヤニヤしてんだろうね?」
「ベランダの案山子が好きなんじゃない?」
隣の家が井戸に湧いた赤錆びた水のような液体しか飲まなくなり、常に独特の臭気が漂って我が家を含め近隣の住人全員が閉口している。それでも抗議できないのは、あの家と一家に近付くとひたすら庭の美しさを称賛して話が終わってしまうから。どんな木や花が植えられている事すら誰も説明できないのに。
亡くなった隣人の家の住人の入れ替わりは激しい。何でも家の中でしょっちゅう残影が見えるんだってさ。隣人の俺からしちゃ、一度も家の中に入ってないのに。あ、反復横跳びしてる。
ベランダで煙草を吸っていた夫が突然ブッと噴き出した。
「あれだけ『歩行の際はお気を付けて』という看板が並んでるのにペチャクチャ騒ぎながら自撮りに夢中なパリピ気取りの女ども、皆仲良く転んで花になったぜ」
んもー今月に何人目よ。掃除当番近いから面倒だわ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる