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心臓の上なら、
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ずっとずっと待っていた、この時を。
心と躰、お互いのそれを繋ぎたい、それを確かめ合いたいという欲求は、尽きる事がない。どちらか片方など、ありえなかった。
賢希の硬い掌がヒカルの小さな頭やまろい頬に辿り着き、ゆるやかに撫でる。彼女が彼に柔らかく笑いかけ、賢希も不器用ながらヒカルに柔らかく笑みを返す。嬉しそうな顔で笑ってくれるのが嬉しかった。薄い皮膚は他よりも敏感にそれを感じ取り、胡座を掻いた賢希に跨るようにして膝をつくヒカルの内腿が震える。微かに耳に届く衣擦れの音に空気が揺れた。
ヒカルの躰を布団の上に静かに沈ませた。彼女の躰は賢希の首に巻き付けられた両腕を残し、逞しいの躰にすっぽり覆い隠された。互いの唇の柔らかさ、吐息の温かさ、熱い咥内を丁寧に感じ合う。彼の大きな両手がすっぽりとヒカルの顔を包む。
「……いいか?」
「……うん」
二人は少し掠れた声で囁き合った。彼の手が、ヒカルの着ているキャミソールの中に滑り込み、脇腹をすり抜ける。程なく彼女の背中にじんわりと熱が広がっていき、ヒカルは自分の左肩に口付ける彼の髪をそっと解かした。
触れて、吸って、撫でて、噛んで、穿って。溺れた。
――ヒカルが気絶するように眠りに就いた後。彼は彼女を抱き寄せ、胸の上に自分の頭を乗せた。ちょうどヒカルの心臓がある辺りに唇を寄せる。
「愛している」
まるでヒカルの心臓に呼びかけているようだった。そして彼女の心臓は鼓動でその声に応えた。その瞬間から、ヒカルの心臓が彼女の体内の古い血を新しい血に換えるたび、賢希のヒカルへの愛が彼女の新しい血に籠められた。この先の、ヒカルがその生涯を終えるまでの間、どんな事があろうとも、彼は一人の人間の為に、ヒカルは一振りの刀の為に、共にあり続ける。
ふわりと知覚したそれは、香ったと言うにはあまりにも曖昧で微かだった。けれど嗅ぎ慣れた愛おしく懐かしいような匂い。首筋に埋めた鼻先に触れる髪がさらりと揺れた。ヒカルはまだ眠っているようだ。
「…………」
無言のまま賢希はヒカルのうなじをそろりと撫で上げる。ふるりと震えた嫋やかな肩、首筋は確かな熱を明瞭にして光世の指先はその熱を辿る。
「ヒカルさん」
「う、ん……?」
「ヒカルさんからする匂い、好きだ」
鼻先を掠めて躰に甘い心地を齎すのは肌の匂いだ。あたたかな熱を孕んだ柔らかでしなやかな肢体。手入れの行き届いた髪が含んだ空気に滲ませる香りは、湯上がりの所為か少しだけ湿った匂いを伴った。
「ホッとするのと、何だろうな」
緊張をゆるめさせながら、心を少しだけ落ち着かなくさせる。じわじわと染み渡るそれは堪えがたい熱を生む。
「ああ、そうだ。少し、なんか……」
「コーフンする」
さらりと落としてヒカルの鎖骨を舐め上げると、びくりと震えたヒカルの躰を暴くように賢希は着替えさせたばかりのTシャツからそっと掌を差し入れた。
心と躰、お互いのそれを繋ぎたい、それを確かめ合いたいという欲求は、尽きる事がない。どちらか片方など、ありえなかった。
賢希の硬い掌がヒカルの小さな頭やまろい頬に辿り着き、ゆるやかに撫でる。彼女が彼に柔らかく笑いかけ、賢希も不器用ながらヒカルに柔らかく笑みを返す。嬉しそうな顔で笑ってくれるのが嬉しかった。薄い皮膚は他よりも敏感にそれを感じ取り、胡座を掻いた賢希に跨るようにして膝をつくヒカルの内腿が震える。微かに耳に届く衣擦れの音に空気が揺れた。
ヒカルの躰を布団の上に静かに沈ませた。彼女の躰は賢希の首に巻き付けられた両腕を残し、逞しいの躰にすっぽり覆い隠された。互いの唇の柔らかさ、吐息の温かさ、熱い咥内を丁寧に感じ合う。彼の大きな両手がすっぽりとヒカルの顔を包む。
「……いいか?」
「……うん」
二人は少し掠れた声で囁き合った。彼の手が、ヒカルの着ているキャミソールの中に滑り込み、脇腹をすり抜ける。程なく彼女の背中にじんわりと熱が広がっていき、ヒカルは自分の左肩に口付ける彼の髪をそっと解かした。
触れて、吸って、撫でて、噛んで、穿って。溺れた。
――ヒカルが気絶するように眠りに就いた後。彼は彼女を抱き寄せ、胸の上に自分の頭を乗せた。ちょうどヒカルの心臓がある辺りに唇を寄せる。
「愛している」
まるでヒカルの心臓に呼びかけているようだった。そして彼女の心臓は鼓動でその声に応えた。その瞬間から、ヒカルの心臓が彼女の体内の古い血を新しい血に換えるたび、賢希のヒカルへの愛が彼女の新しい血に籠められた。この先の、ヒカルがその生涯を終えるまでの間、どんな事があろうとも、彼は一人の人間の為に、ヒカルは一振りの刀の為に、共にあり続ける。
ふわりと知覚したそれは、香ったと言うにはあまりにも曖昧で微かだった。けれど嗅ぎ慣れた愛おしく懐かしいような匂い。首筋に埋めた鼻先に触れる髪がさらりと揺れた。ヒカルはまだ眠っているようだ。
「…………」
無言のまま賢希はヒカルのうなじをそろりと撫で上げる。ふるりと震えた嫋やかな肩、首筋は確かな熱を明瞭にして光世の指先はその熱を辿る。
「ヒカルさん」
「う、ん……?」
「ヒカルさんからする匂い、好きだ」
鼻先を掠めて躰に甘い心地を齎すのは肌の匂いだ。あたたかな熱を孕んだ柔らかでしなやかな肢体。手入れの行き届いた髪が含んだ空気に滲ませる香りは、湯上がりの所為か少しだけ湿った匂いを伴った。
「ホッとするのと、何だろうな」
緊張をゆるめさせながら、心を少しだけ落ち着かなくさせる。じわじわと染み渡るそれは堪えがたい熱を生む。
「ああ、そうだ。少し、なんか……」
「コーフンする」
さらりと落としてヒカルの鎖骨を舐め上げると、びくりと震えたヒカルの躰を暴くように賢希は着替えさせたばかりのTシャツからそっと掌を差し入れた。
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