カゾクカイダン(6/2更新)

狂言巡

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家族

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 公営住宅のマンションの七不思議に出てくる人物は全員私の家族だった。だったら今私は誰と住んでるって事にry





 十数年ぶりの家族の再会だ。別々の家から、様々な鞄に入って、東西南北に繋がる道から、同じ家に帰ってきた。





 出世できますように、昇給しますように、結婚できますように、合格しますように……家族の為に毎日お祈りしたら、みんな首を吊っちゃった。





 死んだ妻を林檎の木の下に植えたのだけどまだ出てこない。僕のママは三日で出てきたのに。





 助けて! 助けて! いつもからかってくる弟妹が飛び上がって手を叩く。正しいヒトの躰って大変なんだなぁ。ざぶんとあっという間に優しかったおばあちゃんによく似た鯨に喰われたけど、面倒見ろと口煩い親もどっかいったし、まぁ、いっか。





 断捨離しようと思ったんだけど、やっぱり捨てるには惜しくてね……。傷だらけの血塗れの妻が疲れたように笑う。私達の子供? 貴方のご両親? やっと静かになってくれたわ。





 隣のご一家、普段はとっても気のいい皆さんなんだが、元旦の夜に「赤子の泣き声を止めてくれ」と叫び続けるのがちょっとさぁ……。あと五人家族なのにその夜だけ一人多いし。





 某所で発見される少女達は「親に会いに行く」と言い残して身を投げるそうだが、誰も親とは死別を経験していないのだ。アレを親と呼ぶと自分の人間性を疑われかねないが、形式上の話である。





「もう隣のおばさんからお裾分け貰っちゃダメよ、亡くなってるから」
「えーずるいよ、ママはなんか貰ってんじゃん」
「アレはね、返してもらってるだけよ」

 おばさんが来なくなった頃、パパが帰ってきた。なんか臭くね?





 リノベーションして自分の店にするために買った中古物件。壁の扉の向こうから、自分が成人する前に亡くなった家族が団欒する声が聞こえる。数えると一人多い。インテリアの一部としてこれ以上手を加えない事にした。
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