カゾクカイダン(11/17更新)

狂言巡

文字の大きさ
上 下
8 / 16

しおりを挟む
 妹は変な男ばかり好きになる。ついこの間別れた男の実家に行くと、リビングの棚に大量のカメラが置いてあった。それらは両親と弟妹と祖父母だと紹介された。そのマニアックな愛し方で妹はもう十分引いていたが、極めつけは帰るまでずっとカメラがある方から複数の視線を感じていたらしい。





 妹は結婚後、料理に凝っていたらしい。遺品整理で調理器具を片付けている途中、手に取ったまな板を引っ繰り返すと自分の家族の殺人計画が刻まれていた。





 煩いなぁ、何観てんの。妹の部屋に行くと、赤一色のスクリーンと椅子。すっと真っ白な掌が画面に映り、バイバイと左右に振られて消える。妹はアレから行方不明だ。彼女は左利きだった。あの映った手も左手だった。





 夫が不倫相手と逃げて意気消沈していた妹が、突然旅行に行くと言い出した。悲しみと絶望のあまり自死を選ぶのではないかと心配になって後をつける。崖へと続く道の入口に座り込む妹に、同世代らしき女の幽霊が寄り添う。背をさする腕と眼差しは労りに満ちていながら、唇は「早く進め」と繰り返していた。





 可愛いとバズった、若い女の人が子犬を抱っこして歩いているのを撮影した映像。数年前に行方不明になった妹だ。不可思議なのは、彼女は母親譲りの犬アレルギーで、自作の一点物のワンピースは納戸で衣装箪笥の奥に吊るされたままだ。本人と一緒に、ずっと。





 上階から小包が降りてきた。拙い日本語で「おとどけもの」と書かれている。この国独特の交流方法なのかと包みを開けると、故郷の山に埋めた妹の首が入っていた。





 空に空いた穴に手を振ってみると、鍵が落ちてきた。何だっけと記憶を辿ると、動かなくなった妹を隠したロッカーの鍵だと思い出せた。





 濡れ鼠の行列の先頭は、失踪した妹だった。何でも割り込んで掠めとるの得意だったからなぁ。





 初めての一人旅。宿泊先の部屋の机の上に見慣れたぬいぐるみが置いてあった。一人隠れんぼで使った妹のぬいぐるみ。どうして……葬式の時に一緒に燃やしてもらったのに……。





 服という服が棒状に絡み付いた物体が部屋に落ちていた。端を剥がすと塊の芯は妹。粗雑に扱った報いだよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ツガイサガシ(6/25更新)

狂言巡
ホラー
人間に異種交流を掲げつつ、影で番探しに躍起になっている人外の話。

ロウドウ怪談(2/26更新)

狂言巡
ホラー
職場で体験した奇妙な話を耳を傾ける短編集。

ガッコウカイダン(4/16更新)

狂言巡
ホラー
サクッと読める学校で起こったホラー超短編集です。

累アーカイブ(3/4更新)

狂言巡
ホラー
何の脈絡も前兆もなく兄弟が増え続けるホラー短編連作集です。

後輩の不可解な話(9/29更新)

狂言巡
ホラー
 後輩が不可解な体験をしたり、後輩の存在自体が不可解だったりするショートショートをまとめていきます。

飲みサーの俺と文芸部の友人(2/25更新)

狂言巡
ホラー
 とある男女共学の大学で、飲みサーと化しているオカルト研究部に所属する俺と文芸部に所属する女友達の、不可解で奇妙でうっすら不穏な短編連作。

ニンギョウ怪談(4/2更新)

狂言巡
ホラー
ホラーの定番『人形』にまつわる短編集です。

とある夫婦の怪異譚(3/4更新)

狂言巡
ホラー
 まだそこまで浸透はしていないものの『面倒な手続きを乗りきれば複数人で婚姻してもオッケー!』という法律が存在する世界観で、一妻多夫な資産家一家に関する短編連作、オカルト編です。

処理中です...