カゾクカイダン(11/17更新)

狂言巡

文字の大きさ
上 下
1 / 16

しおりを挟む
 新しい妻が淹れたお茶は美味しかった。心が晴れ晴れとしているうちに、旧式をさっさと片付けなければ。





 妹の家庭菜園から妻のバラバラになって発見された。だったら、遺棄する場所に困って冷凍庫に隠してあるアレらは誰なんだ……。





 ここのところ定時で帰宅すると、隣の部屋に亡くなった妻の遺族が入っていくのを見かける。住んでいるのは唯一生存してる妻の伯母と同世代の女性一人だけのはずなんだが……。





 籍を入れたばかりの妻と旅行。景観とサービスが素晴らしいと評判の旅館に行ったら、予約した部屋以外前妻と元愛人で満室だった。





 妻は昨日まで生きていた、はずだ。同じベットで寝たのに、火事で全焼したと言っていた実家で首を吊ってから三日経っているなんて。だが思い返せば会話が噛み合わない事があった。彼女が火事で亡くしたのは家だけではなくて、両親と年子の妹……。





 妻はいわゆる霊感持ちで視える体質。その影響を受けたのか自分も最近視えるようになったが、子供の頃からそうだった彼女とは流石踏んできた場数が段違いで、何が居ても全く気にしない。頼もしい限りだが、物干し竿に首を吊った状態で現れる女が不倫相手だと気づかれる事が何より一番恐ろしい。





 妻を殺して埋めてから三日経ち、あの場所ではすぐ発見されるかもしれないと不安になった。遺棄する場所を変えようと掘り起こすと、骨しか見つからない。更に手足が多い事に戦慄する男に「足りない」としがみついてきた。





 妻を埋めた山で知らない男が勝手に穴を掘っていたので慌てて殴って止めさせた。すると穴から妻の声で見知らぬ男の名前と今日の年月の声が聞こえた。後に、都会で人気のない場所で穴を掘って占う方法が流行っている事を知った。





 浜辺に落ちていた瓶には手紙のような物が入っていた。好奇心の赴くままに中身を取り出す。私がこの海を訪れて手紙が入った瓶を拾うまでの数日間の行動が事細かに書かれていた。旅行に出かける前、庭に埋めた妻の字だった。





 友人に紹介してもらったジムで腰を抜かしそうになった。馬鹿な、嘘だ……! なかなか痩せない元妻はバラバラにして、近所のゴミ屋敷に屯する野良猫にやったはずなのに。





「私が行きます」

 妻の寝言に絶望した。それは死神の死刑宣告に等しい。次は誰だと思いを巡らせた時、子供部屋で何かが落ちる音がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怪奇拾遺集(7/4更新)

狂言巡
ホラー
語り部がいる『口承怪談』とは違う形式で書いたホラー短編集です。

ガッコウカイダン(4/16更新)

狂言巡
ホラー
サクッと読める学校で起こったホラー超短編集です。

オウチカイダン(12/22更新)

狂言巡
ホラー
『家』『住居』がテーマの怪異短編集です。

累アーカイブ(2/23更新)

狂言巡
ホラー
何の脈絡も前兆もなく兄弟が増え続けるホラー短編連作集です。

ロウドウ怪談(11/17更新)

狂言巡
ホラー
職場で体験した奇妙な話を耳を傾ける短編集。

後輩の不可解な話(9/29更新)

狂言巡
ホラー
 後輩が不可解な体験をしたり、後輩の存在自体が不可解だったりするショートショートをまとめていきます。

ちょっと昔の妙な話

狂言巡
ホラー
なんちゃって江戸時代から明治時代が舞台のホラー短編連作です。

とある夫婦の怪異譚(2/23更新)

狂言巡
ホラー
 まだそこまで浸透はしていないものの『面倒な手続きを乗りきれば複数人で婚姻してもオッケー!』という法律が存在する世界観で、一妻多夫な資産家一家に関する短編連作、オカルト編です。

処理中です...