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再会/エッグと怪人達
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再び出会ったのは、組織の工作員の一人が消息を絶った保養地の近くだった。垢抜けた美人で諜報には役に立つ女だったのだが、情報ごと消えたのだ。裏切りの可能性があるという事もあり、オニキスとスモーキーが調査と始末に向かったのだ。二人の前から走ってきたのが、髪をポニーテールにして無難なランニングウェアを着た、エッグの中身だった。スモーキーどころかオニキスまで目を見開いたのは、髪から服までベッタリと赤黒い血で汚れていたからだ。血の海で転びでもしたら、あんな姿になるのだろうが、本人はオニキスを見た途端に表情を明るくした。
「よかった! すみませんお金貸してください! 百五十円!」
――お前、他に言う事はないのか。出会い頭に金を無心された事は初めてだ。だが、以前の恩もある。金を出すと手がベッタリと血で汚れている気付いて困った顔をした。頬を赤く染め、走ってきた所為か額には汗が浮いている。どうにも自動販売機でペットボトルが買いたいらしく、スモーキーが代わりに買ってやると、ゴクゴク一気に飲み干した。
「何があったんだよ……」
オニキスも知りたかった事をスモーキーが聴く。夏の清涼飲料水のCMにでも出てきそうだったが、それだけに血塗れの姿が異様さを増す。
「この先のキャンプ場のオーナーが理想のお嫁さんの生成に励んでてたらしくて。殺されそうになったから逃げてきました。一番近い民家で通報するところだったんです」
予想外の答えに流石のオニキスも聞き返す事になった。近くの囲炉裏がある旅館に宿泊に来て、ジョギングをしていたらランニングコースのキャンプ場で殺されそうになったという。オーナーの男は美しいと評判の女を集めては殺して解体、繋ぎ合わせて理想の美女を作り上げようとしていたらしい。オニキスもスモーキーも同じ事を考えた。あの構成員は裏切ったのではなく、その犠牲になったのではないだろうか。だとすると、警察が来ると面倒だ。
案内されたキャンプ場の管理人住居の地下は、有り触れた表現で言えば地獄絵図だった。バスタブは赤い液体で満たされ、床には人間の臓物や皮膚が散乱、天井から手足がぶら下がっている。修羅場に慣れているオニキスが眉を顰め、スモーキーは青褪めた程だ。そこに恐怖も躊躇いもなく突き進んだ女が積み上げられている死体の山を漁り、USBを探し出して、手渡してきた。『ほら私いい子でしょう?』と言わんばかりの笑顔だ。スモーキーはこの異常な光景と笑顔の一般人(仮)に飲まれていたので、代わりに受け取る。
「管理人はどうした」
聞けば、指で示された先に、斜めに切られた竹に男(半裸エプロン)が串刺しになっていた。
「お前が仕留めたのか」
「違います。追いかけてきたから、後ろに回って突き飛ばしただけです。警察には逃げたら叫び声が後ろで聴こえたって言いますね。あ、借りたお金なんですが、今は返せません」
自分達の事を内密にするのは英断だと思うが、他に言う事ないのか。
「ボス、コイツはその……」
スモーキーが後ろから、哀れみとも恐れともつかない声をかけてくる。
「金はいい、この前の礼だ」
そう言えば納得した様子だった。キャンプ場から出る道すがら、死んだ部下の穴埋めがいると考えて勧誘すれば、怪人でもなかなかしないような表情になる。ゾッとするような狂気が齎す妖艶さが、魂を絡め取る程の引力を放つ。身構えて銃に手を伸ばしたがすぐに韜晦するように笑顔で「健康で文化的な最低限度の生活に満足しております」と断ってきた。こんな血塗れのクセに、何を真っ当な事を言うのやら。スモーキーさえ哀れみを抱くわけだ。おそらく、彼女には狂っている自覚がない。いや、狂っているのが状態なのだ。
それから数時間後。日本では珍しい大量殺人、しかも犯罪史を更新する猟奇殺人とあっては、注目が集まらないはずもない。三人が立ち去った後、その地区はマスコミと警察が大挙して押し寄せた。テレビはそのニュース一色で、マスコミはヘリで上空から撮影する熱の入れようだった。
「よかった! すみませんお金貸してください! 百五十円!」
――お前、他に言う事はないのか。出会い頭に金を無心された事は初めてだ。だが、以前の恩もある。金を出すと手がベッタリと血で汚れている気付いて困った顔をした。頬を赤く染め、走ってきた所為か額には汗が浮いている。どうにも自動販売機でペットボトルが買いたいらしく、スモーキーが代わりに買ってやると、ゴクゴク一気に飲み干した。
「何があったんだよ……」
オニキスも知りたかった事をスモーキーが聴く。夏の清涼飲料水のCMにでも出てきそうだったが、それだけに血塗れの姿が異様さを増す。
「この先のキャンプ場のオーナーが理想のお嫁さんの生成に励んでてたらしくて。殺されそうになったから逃げてきました。一番近い民家で通報するところだったんです」
予想外の答えに流石のオニキスも聞き返す事になった。近くの囲炉裏がある旅館に宿泊に来て、ジョギングをしていたらランニングコースのキャンプ場で殺されそうになったという。オーナーの男は美しいと評判の女を集めては殺して解体、繋ぎ合わせて理想の美女を作り上げようとしていたらしい。オニキスもスモーキーも同じ事を考えた。あの構成員は裏切ったのではなく、その犠牲になったのではないだろうか。だとすると、警察が来ると面倒だ。
案内されたキャンプ場の管理人住居の地下は、有り触れた表現で言えば地獄絵図だった。バスタブは赤い液体で満たされ、床には人間の臓物や皮膚が散乱、天井から手足がぶら下がっている。修羅場に慣れているオニキスが眉を顰め、スモーキーは青褪めた程だ。そこに恐怖も躊躇いもなく突き進んだ女が積み上げられている死体の山を漁り、USBを探し出して、手渡してきた。『ほら私いい子でしょう?』と言わんばかりの笑顔だ。スモーキーはこの異常な光景と笑顔の一般人(仮)に飲まれていたので、代わりに受け取る。
「管理人はどうした」
聞けば、指で示された先に、斜めに切られた竹に男(半裸エプロン)が串刺しになっていた。
「お前が仕留めたのか」
「違います。追いかけてきたから、後ろに回って突き飛ばしただけです。警察には逃げたら叫び声が後ろで聴こえたって言いますね。あ、借りたお金なんですが、今は返せません」
自分達の事を内密にするのは英断だと思うが、他に言う事ないのか。
「ボス、コイツはその……」
スモーキーが後ろから、哀れみとも恐れともつかない声をかけてくる。
「金はいい、この前の礼だ」
そう言えば納得した様子だった。キャンプ場から出る道すがら、死んだ部下の穴埋めがいると考えて勧誘すれば、怪人でもなかなかしないような表情になる。ゾッとするような狂気が齎す妖艶さが、魂を絡め取る程の引力を放つ。身構えて銃に手を伸ばしたがすぐに韜晦するように笑顔で「健康で文化的な最低限度の生活に満足しております」と断ってきた。こんな血塗れのクセに、何を真っ当な事を言うのやら。スモーキーさえ哀れみを抱くわけだ。おそらく、彼女には狂っている自覚がない。いや、狂っているのが状態なのだ。
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