飲みサーの俺と文芸部の友人(2/25更新)

狂言巡

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因果の話

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 飲みサーの俺が、今回は文芸部の友人(以下、お清さん)はノータッチだと思っていた話。高校卒業後から働いている友人(以下、バ助)から聞いたのだ。キッカケはバ助が俺が在籍していたクラスに転校してきたのだ。それから何かとウマが合い、交流は今も続いている。お互い二十歳の誕生日を迎えたので、当時のバ助が下宿していたアパートで飲む事になった。ふと会話のネタが尽きた時、バ助が切り出したのだ。

「俺が転校してきた理由、話してもいい?」

 中途半端な時期だったし、てっきり親の仕事の都合だと思っていた俺はちょっと驚いたが、先を促した。

「俺、イジメられてたんだ」

 ヘビーな話だった。そりゃ親の都合じゃないなら、やらかしたかやられたかのどっちかだと想像はしていたが。メンタルが素人目でもヤバそうならプロに任せよう。

「辛いし怖くてさ、やり返すってか舐められないように空手を習い始めたのね」

 元から進んでスポーツしたがる方ではなかったので最初はしんどかったが、少しずつ上達してきて自信もついてきた頃、空手部顧問はバ助の入部理由を知ったらしい。

「『退部しろ』って言われた」
「何でそうなる?」
「今思えばさ、決闘ごっこされて警察沙汰とか避けたかったのかな、知らんけど」

 バ助は必死にイジメ被害を訴えたが、顧問は言い訳するな退部しろの一点張り、挙げ句の果てに親を呼び出して退学手続きだと言い切られた。

「でもその先生さ、自分の親とどっこいのそこそこ若い先生だったのね。退学とか簡単に決められるかよ」

 そこまで考えられる余裕は、当時のバ助にはなかった。もうお先真っ暗だと絶望した彼は遺書を書いて死ぬ事にした。苛めっ子も教師も実名で。何人分か書いて近所に投函、近場の人生強制終了スポットに急行したのだが。

「お巡りさんってすげーわ」

 巡回中だった警察官が挙動不審なバ助を見つけて保護してくれた。連絡を受けた両親は仕事人間だったが、息子が可愛くないわけではなかったらしく、すぐさま転校させてくれた。

「で、先公はあの後死んだらしい」

 脳梗塞だか心筋梗塞だか、急な発作でポックリ逝ったらしい。事件や事故ならニュースになるが、転校したバ助が何故詳しいのかと言うと、別の中学に進学した友達(ご近所さんだった)から聞いたらしい。

「でも変な事言うんだ」

 顧問が亡くなって暫らくしてから、ジャージ姿で竹刀を持って現れるようになった。向こうが気付くと、怒鳴ってくる。生前はそんな格好していた事はなかったのに。
 ……そんな体験談を、お清さんにしてみようかと思っていたのだが、後輩の話でやめた。

「廊下歩いてたら、ジャージ着て竹刀を持ったオッサンにお清さんって人居ますかって聞かれて吃驚したっす」

 俺の前には絶対現れないでほしい。
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