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執心
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「ジェラール=ブルゴーニュです。えっと……あんまり怖くなくても文句とか言わないでくださいよ? あれは確か……去年の夏日くらいだった気がするんですが……」
深夜、ジェラールは妙に寝苦しくて起きた。
でも起きても上に人が……なんてことなく、すぐに寝直せた。暑かったからだと思って。
でも、その日から毎日寝苦しくなって起きるようになった。最初うなされた時とは違うところがあった。
起きる直前に毎回同じ夢を見る。赤毛の美しい女性が一人出てきて、何回もジェラールの名前を囁くように呼ぶ……それだけの夢。
「それでも数日くらいなら我慢できたんですですけど、なんと一ヶ月以上も続いたんですよね、これが!」
正直、気味が悪くなった。夢を見ている間は、眠れた気が全然しない。
「……だから、ちょっと寝不足で思考回路がおかしくなってたのかもしれません。いっそのこと、貫徹してやろうと思い至ったんですよ」
適当に深夜のテレビを観てたら……突然、背中から変な感覚がした。
ねっとりと撫でるように触られているような……気持ち悪い感じが。
「痴漢されるっていうのは、きっとあんな感じなんでしょうね」
しかし、ジェラールは抵抗しなかった。そもそも、躰が言うことをきかなかったのだからどうしようもない。
そして……。
「ジェラール」
耳元で自分の名前を囁かれた。何回も何回も、呪文のように。
「ええ、例のあの夢ですよ。でも今回もまた状況が違いました。首へだんだん力がかけられてきたんです。あ、ヤバイ! って思ったら、案外あっさり目が開いたんです」
目の前には一人の女性……毎晩夢に出てきた、あの女性が目の前に立っていた。目尻と口元から血を流す彼女と、ばっちり目が合った。
それはそれは嬉しそうに微笑んだ彼女はもう一度私の名前を呼んで、消えていった。その後ジェラールは、久しぶりに深い眠りに落ちることができた。
「……翌朝、改めて夜のことを思い出してみたんです。本当は、全部夢の話だったって思い込みたかったんですけど……無理な話でしたよ」
顔を洗いにいった時、自分の首に残った真っ黒な痣を見つけてしまったのだから……。
「これで俺の体験談は……って、はい? ああ夢に出てきた女性の正体ですか? ……たぶん、昔付き合ってた恋人の一人だと思います。でも、俺が別の恋人とデートしてるところを見ちゃったらしくて……去年自殺したんですよ。これで本当に俺の話はおしまいです。大した後日談もなく、すいませんね……」
「ほら、あんまり怖くなかったでしょう?」
青年が語り終えると、誰かに呼ばれたかのようにサッと後ろを振り返った。
深夜、ジェラールは妙に寝苦しくて起きた。
でも起きても上に人が……なんてことなく、すぐに寝直せた。暑かったからだと思って。
でも、その日から毎日寝苦しくなって起きるようになった。最初うなされた時とは違うところがあった。
起きる直前に毎回同じ夢を見る。赤毛の美しい女性が一人出てきて、何回もジェラールの名前を囁くように呼ぶ……それだけの夢。
「それでも数日くらいなら我慢できたんですですけど、なんと一ヶ月以上も続いたんですよね、これが!」
正直、気味が悪くなった。夢を見ている間は、眠れた気が全然しない。
「……だから、ちょっと寝不足で思考回路がおかしくなってたのかもしれません。いっそのこと、貫徹してやろうと思い至ったんですよ」
適当に深夜のテレビを観てたら……突然、背中から変な感覚がした。
ねっとりと撫でるように触られているような……気持ち悪い感じが。
「痴漢されるっていうのは、きっとあんな感じなんでしょうね」
しかし、ジェラールは抵抗しなかった。そもそも、躰が言うことをきかなかったのだからどうしようもない。
そして……。
「ジェラール」
耳元で自分の名前を囁かれた。何回も何回も、呪文のように。
「ええ、例のあの夢ですよ。でも今回もまた状況が違いました。首へだんだん力がかけられてきたんです。あ、ヤバイ! って思ったら、案外あっさり目が開いたんです」
目の前には一人の女性……毎晩夢に出てきた、あの女性が目の前に立っていた。目尻と口元から血を流す彼女と、ばっちり目が合った。
それはそれは嬉しそうに微笑んだ彼女はもう一度私の名前を呼んで、消えていった。その後ジェラールは、久しぶりに深い眠りに落ちることができた。
「……翌朝、改めて夜のことを思い出してみたんです。本当は、全部夢の話だったって思い込みたかったんですけど……無理な話でしたよ」
顔を洗いにいった時、自分の首に残った真っ黒な痣を見つけてしまったのだから……。
「これで俺の体験談は……って、はい? ああ夢に出てきた女性の正体ですか? ……たぶん、昔付き合ってた恋人の一人だと思います。でも、俺が別の恋人とデートしてるところを見ちゃったらしくて……去年自殺したんですよ。これで本当に俺の話はおしまいです。大した後日談もなく、すいませんね……」
「ほら、あんまり怖くなかったでしょう?」
青年が語り終えると、誰かに呼ばれたかのようにサッと後ろを振り返った。
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