狼と猫の食卓(12/10更新)

狂言巡

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ビーフシチュー

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 黒狼家の屋敷は広い。当然キッチンも。二日かけて作ったビーフシチュー。夫は全員健啖家で、巨大な鍋で作ってある。中身は深い赤銅色。愛犬が物欲しげに黒猫を見上げて尻尾を振っている。

「あぁ、ごめんなさいね、ドロップちゃん。もうこんな時間ね。ご飯にしましょうね」

 黒猫はドロップ専用の皿に夕飯を入れてあげる。

「待て、お手、伏せ、えらい子、食べていいわよ」

 ぐつぐつぐつぐつ……。
 鍋の灰汁取りをしながら、レードルからぶちまけないように仕上げていく。

「そろそろ、いいかな」

 ブイヨン、リオンの自家製トマトピューレ、すりおろしニンニクを入れて、あと十数分。
 ぐつぐつぐつぐつ……。

「ただいま」
「お帰りなさい」
「いい匂いだね、ビーフシチューか」
「ライスとバケット、トマトのマリネと茸の佃煮がありますよ」
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