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マドレーヌ
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顔のすぐ前にマドレーヌが乗った盆が差し出された。先程焼き上げたばかりなのか、ほんのり湯気が立っている。香ばしい匂いに釣られて礼よりもまず一つ手に取った。なかなかの出来栄えだと思うが、菓子に反して世鷹は不満そうだ。
彼としては以前黒猫が読んでいた挿絵そっくりに作りたかったのに、実際のそれはそこまで膨らまなかったのがお気に召さなかったらしい。一口齧ると、強すぎず弱すぎない甘さが咥内に広がる。人工的な甘さを苦手とする黒猫の事を考慮したのか、砂糖ではなく蜂蜜を練り上げた物らしかった。
「兄さんみたいにはいかないなぁ」
「美味しいですよ、有り難うございます」
「今度はうまく焼いてみせるから、楽しみにしててね」
妻の言葉にようやく眉間の皺を解いたが、唇はとんがったままだった。
彼としては以前黒猫が読んでいた挿絵そっくりに作りたかったのに、実際のそれはそこまで膨らまなかったのがお気に召さなかったらしい。一口齧ると、強すぎず弱すぎない甘さが咥内に広がる。人工的な甘さを苦手とする黒猫の事を考慮したのか、砂糖ではなく蜂蜜を練り上げた物らしかった。
「兄さんみたいにはいかないなぁ」
「美味しいですよ、有り難うございます」
「今度はうまく焼いてみせるから、楽しみにしててね」
妻の言葉にようやく眉間の皺を解いたが、唇はとんがったままだった。
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