狼と猫の食卓(12/10更新)

狂言巡

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 アルミホイルの包みを開いた瞬間に漂うのは、ほんのりと塩気を帯びた香り。中身は鮭の切り身だった。細く切られた玉葱、シメジとエノキダケも一緒に入っている。少し醤油をかけてから、箸で切り分けて一口分持ち上げると、黄金色のバターと黒い醤油が滴り落ちた。臭みがなく脂の乗った柔らかな鮭はバターと魚の脂が混ざり合い、醤油が一層味を引き立てる。付け合わせの野菜にも旨味がしっかり染み込んで、ただの野菜や茸にはない味を作り出していた。魚は好きではないと言っていた長兄もパクパク食べてくれて、黒猫は安心した。
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