上 下
234 / 234

第233話 試練突破の方法

しおりを挟む

「……消えた」

4体のナグロナイトと接戦を繰り広げていた時、俺の周りにいた魔王の身体が霧のように消えていった。
奴の分身体が消えたってことは……アレスたちがやったってことか。

ただ……俺は自分の身体を見てみる。

「……やっぱりか」

予想通りの結果で俺は少しだけ顔を顰める。

「とにかくラーナたちのところに行こう」

最後に奴が散っていく姿を見てから、俺は再び魔王城へと向かうのであった。





「……やった、のか?」

アレスの声が静寂な空間を打ち消した。それに呼応するようにナーシャは喜びながら、今も眠っているソフィアに抱きつく。

「凄い!凄いよソフィアちゃん!魔王倒しちゃったよ!私たち、世界救ったんだよ!」

子供のようにはしゃぐナーシャの姿を見て、ローズも安心するように笑みを浮かべ、アレスもまた、力尽きたように尻もちをついた。

「ラーナ。お疲れ様です。今回復しますね」


「えぇ。少しお願いするわ……うっ」

傷の損傷が激しいことや、疲労が溜まったのかラーナは体勢を崩して、ルシアはそんなに彼女を回復魔法をかける。

「これであの方が言う試練というのは突破したということでよろしいのでしょうか?」

「……どうかしらね」

もし魔王を倒したという実績が試練を突破する条件であれば何かしらの変化があるはずなのに、今はそんな変化など見当たらない。

「とにかくアクセルを待ちましょう。それにしても……これは凄いわね」

ラーナが禍々しい魔王城から銀色の世界と化した景色を見て、言葉を発する。

「えぇ。やはりソフィア様も秘めたる力を持っていたということでしょうね」

「マリアさんとアクセルの妹よ?これくらいやって貰わなきゃ困るわ」

「マリアさんのことも高く評価してるのですね?」

「………貴方、私を頑固じじいと思ってるわけ?」

「いえ、少し意外だったもので。ふふっ」

ルシアが自分を見て微笑んでるのを見て、どこか疲れたようなため息を吐くが、ラーナも自然と笑みを浮かべていた。
やはり、魔王を倒したという達成感に浸っていきたいのだろう。

「ッ!……ルシア」

「えぇ、誰か来たみたいですね」

二人が外から誰かの気配を感じ、それぞれいつでも戦闘できるように構える。

外にはまだ敵がいるかもしれない……そんな予想をしていたせいか、いつもよりも二人は警戒心を高めていたのだ。
そして、その人物が魔王城の中に入ってきた。アレスたちも気づいたのだろう。再び武器を構えて……その人物を見て、少しだけ警戒心を解いた。





「……なんだこれは?」

魔王城にやって様子を見に行くと、そこには銀色の世界……雪景色か広がっていた。

「アクセル、無事だったのね」

そんな光景に呆気に取られていると、ラーナとルシアが声を掛けてきた。二人とも、いつも以上にボロボロであった。

「大丈夫か?」

「大丈夫……ではありませんね。流石に魔王を相手にするのはとても辛いです」

あはは……と苦笑するルシアを見る。ダメージは負ってないものの、いつもよりも魔力が少ない。相当無茶したってことか。

「悪いな。手助け出来なくて」

「気にしないで。あの4体を引き剥がしてくれただけで充分だわ。それに、あの子が魔王を倒したのよ。私たちはそれのサポートしただけ」

「ソフィアが?」

驚いた……まさかルシアの異能をソフィアに掛けたのか?原作だとアレスが……いや、少し野暮だな。
俺は彼女のそばまで近づく。彼女を抱きしめていたナーシャには怖がられたのは、仕方ないと割りつつ、眠っている彼女の頭を撫でる。

「……よく頑張ったねソフィア。流石、俺アクセルの妹だ」

……さて。俺は自分のやるべきことを果たすために、ソフィアの頭から手を離してから、今も俺のことを敵意を剥き出しにしているアレスに近づく。

「……礼は言わないぞ虚無。一体なんの用だ?」

「礼は言わなくていい。ただ頼みたいことがある」

「頼みたいこと?お前が僕に?ふざけるのも大概に……」
「俺を殺してくれ」
「……は?」

「アレス。頼む……俺を殺してくれ」

その言葉を聞いて、ラーナとルシア含む全員が俺を見て唖然としていた。
もし、原作通りにするのなら……方法はこれしかない。

そんなことを思いながら、俺は主人公と向き合った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...