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第227話 戦闘と召喚

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ナグロライト目掛けて、準備運動も込みで複数の斬撃を放った。
それに対して、奴は諸共せずただ指を上に上げ、地面を隆起させることで防いだ。

「ほう、貴殿は斬撃も使えるのか。前までは剣を使わなかったが、舐めプものであったか?」

「それは、想像に任せるよ」

魔王の言葉を返してから、奴の隆起させた地面の上に目掛けて飛んで、そのまま脳天を目掛けて叩き切る。
しかし、流石は魔王なのか。玉座から立ちもせずに自身の剣を顕現させて、俺の攻撃を受け止めた。

「どうした?そんな程度では俺は倒せんぞ?」

「……言ってろ。図体だけかデカい老いぼれが」

ナグロナイトにそのまま吹き飛ばされるが、俺は空中で体勢を整えてから、奴の周りに極小の魔法陣を数百展開。

弾ける炎バーニング

そのまま連鎖するように奴の周囲が爆発で覆われた。
煙が舞う中、俺は自身の身体を動かして違和感を感じた。

「……やっぱり、この世界のアクセルとあっちの世界の俺だと少し感覚が違うな」

魔法の技術はすごいが、逆に身体能力の低さが著しく感じ取れる。
アクセルの身体が並外れていたのは分かっているのだが、ずっと修行してきた俺からすれば正直、物足りなかった。

「仕方ない。接近戦は捨てだ」

剣を捨てて、俺はおそらく無傷であろうナグロライトにいつでも対応できるように構える。

「ッ!?」

上からとてつもない気配を感じ、俺はその場から避ける。見ると、俺を串刺しにする勢いで剣を刺してきたナグロナイトの姿だ。

「流石だ虚無よ。我が魔王幹部にまで上り詰めただけはある」

「……無傷な身体で言われても嬉しくないな」
 
こいつもこいつで、反則級の異能を所持してるのは理解したが、やはり相手にすると厄介だな。

雷帝エデン!!」

奴の上空から強大な雷の一撃をお見舞い。だが、それを食らっても尚、奴はまるでダメージを受けていないかのように身体を動かしていた。

「……あらゆるものを反転する力」

「ほう、俺の異能を見破ったか。そんな奴を見るのは久しぶりだな。だが、まさか貴殿がその中に入るとは、恐ろしいものよ」

そう言って奴は俺に手を向けた。すると突如、足場が無くなり下に落ちる感覚に陥った。

「……面倒だな」

風魔法でなんとか宙に留まり、俺はナグロナイトを見る。

「獄門」

すると、奴が持っている剣が怪しく輝き出してから、数千はあるであろう斬撃が俺に襲いかかる。

俺はそれに対して虚無力のバリアを展開。奴の攻撃が俺に当たる前に消滅していく。

その間、俺は奴のことを頭の中で思考する。

(このまま時間を潰すのもいいが、少しでも奴の戦闘を経験していきたい。それにしても……反転の力か。おそらく、奴がダメージを受けないのも、さっき俺が変な感覚に陥ったのもそれが原因だ)

重力を反転させて、俺を落下死させようとしたのか……少し舐められたもんだな。

(……このまま倒してもいいが……)

「もう少しだけ付き合ってもらうぞ」

俺は奴の攻撃を虚無力を纏い攻撃を受けながら、そのまま接近していく。
奴は不審に思ったのか、攻撃をやめて俺から離れる。

懸命な判断だが、少し遅いな。

虚無の力ヨグ=ソトース

俺は奴の背後に圧縮した虚無力を放出する。

「ッ!?」

その技を聞いて、奴は背後に下がるのをやめこちらに接近した。
やはり奴にとってもこの力は危険ということか。

「ふんっ!」

奴の剣が俺目掛けて飛んでくる。だが、俺はそれを空中で軌道をずらして躱し、奴の横腹に手を当てる。

「……癒しヒール

普通ならば相手にとってこれは悪手だ。だが、こいつにとってはまた別だ。

「むっ……!」

顔を顰め、奴は俺を吹き飛ばし、そのまま距離を取る。
その間も、事前に奴の身体の中に展開した魔法陣を利用して回復魔法をかけていく。

「あんたのその異能、すぐには反転できないんだろ?しばらくそれでも喰らっとけ」

「……穴を突かれたか」

顔を顰めながらも余裕そうだ。初級だが攻撃魔法を1秒1秒食らってる感覚に陥ってるのに、流石だな。

「貴殿、いつのまにそこまで強くなったのだ?俺でも翻弄されてしまったぞ」

「死ぬ気で鍛えましたからね。魔王様に意表を突いたと考えれば、嬉しい誤算だ」

「……まだ本気ではないのであろう?」

「さぁな。だが、俺はここまでだ」

……準備は整った。俺は自分自身の下に魔法陣を展開する。
一か八かだが、賭けるしかない。

「魔王、ナグロライト。選手交代だ。ここからは……本物の主役たちの出番だ」

そして、俺はその魔法を発動した。

「……召喚ワープ

すると、俺の下にある魔法陣が光り輝く。そのあまりの眩しさに俺も魔王も目を腕で覆ってしまう。

「………な、なんだ?ここは一体……?」

すると、ここにはいないはずの男の声が聞こえた。辺りは……変わっていない。だが人数は多くなっていた。

「……成功か」

俺の目の前には、この世界の主役であるアレスたちの姿があった。
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