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第195話 ヒロインズの海遊び〜マリアとジーク〜

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聞き覚えのある声が耳に入ったので、そちらを見てみると、そこにはマリアとジークの姿があった。

彼女らの後ろには何かネットのようなもの張っており俺は何故かそれに既視感を覚えつつも、彼女たちのところに向かう。

「こんなところで何やってるんだ?」

そう聞くとマリアは両腕を腰に当てて得意げに話す。

「アクセルがここに来ると思ったから!」

「ごめん俺の質問の内容聞いてた?」

なんでここにいるかって質問になってるぞ。
準備をしながら話を聞いていたであろうジークはそんなマリアの姿に呆れるようにため息をして、事情を説明する。

「ビーチバレーをしようと思いまして」

「び、ビーチバレー?」

……その割には二人しかいないと思うけど?

「アクセル様の思っていらっしゃる通り、私とマリアしかいませんが、そっちの方がいいのです」

「な、なんでだ?」

「私とジークで本気の勝負をしたいからよ。この前こいつに連れ回された恨み……晴らしてやるわ」

マリアが恨めがましそうにジークを睨み、対する彼女も目を鋭くさせ、視線がバチバチなってるように見えてしまう。

「そうか……じゃあ俺は邪魔ってことだな」

早くここから去ろう……そう思ったのも束の間。マリアにぐいっと腕を引っ張られる。

「な、なんだ?」

「そんな冷たいこと言わないでよアクセル~。どうせだから私たちの試合見たいよね?ね?ね?」

「い、いや……ここに来たのは偶然……」

……そう言うと、後ろにいるジークが明らかにショックを受けたかのようにどんよりとした空気を醸し出している。
え?もしかしてジークもそっち側なの?というかマリアさん?なんでそんなキラキラとした目でこちらを見てるのかしら?

「……あの、もしよろしければ私たちの試合……見守ってくれせんか?」

うるうるとした目でジークがこちらに向けて懇願してくる。
か、可愛い……何故か愛犬のタマを思い出してしまった。この人、マリアよりも年上なんだよね?なのになんでこんな可愛いんだ?

「……分かった。でも少しだけだぞ?」

「っ!そう来なくっちゃね!流石アクセル!」

マリアは嬉しそうに俺に抱きつき、ジークは嬉しそうに表情がぱぁ…!と明るくなった。

さてはこの人たち……俺が来ると予想して場所をここにしたな?

そんなことを思ってると、いつの間に用意してくれていたのか、組み立て椅子のようなものに座らされた。

そして、二人はお互い自分のフィールドに入り、腕を伸ばしたり、足を伸ばしたりして準備運動をしている。

「さぁジーク!私は準備を出来たわよ!始まるならとっとしなさい!」

「えぇ。言われなくても分かってるわ。でもその前に……マリア、あの約束、忘れたわけではないわよね?」

ジークが目を鋭くさせて彼女にそう問うが、マリアはそれに臆さずに軽々しく答える。

「もちろんよ。それに勝つのは私だって決まってるんだから、あんたこそ忘れられちゃ困るわよ」

「……ほざきなさい」

お互い譲らない勝負の一戦。その開幕が始まったと言わんばかりにジークの手に持っていたボールが宙に浮かび……彼女のサーブがマリアのフィールドに向かって襲いにかかる。

ドンッ!!!

「………えっ?」

そのビーチバレーらしからぬ音に俺は思わず変な声を出してしまった。
だが、そんなこと考えてる暇もなく、マリアはそのジークが打ったサーブ……スマッシュを片手で軽々しく打ち返した。

バンッ!!!

「………えっ?」

以下省略。俺が絶句してる合間も彼女達のビーチバレーとは思えない打ち返し合戦が繰り広げられる。

「チッ!中々やるわね……!やっぱりあんたが相手だとそう簡単にはいかないってことね!!」

「当たり前よ!あんたに負けるのは癪だし……!アクセル様とのデート権は誰にも渡さないわ!!特にあんたにはね!!」

「はっ!寝言は寝て言いなさい!!勝つのはわたし……よ!!」

バンッ!!ドンッ!!ダンッ!!!ドンッ!!!

「………」

ここは人がいないから、誰も彼女達の試合の余波で被害が被る事はない。
しかしこれは……みんなが想像する様な可愛らしいビーチバレーと言えるのだろうか?

一体誰が予想した?こんな殺意マシマシのビーチバレーを。
最早一種の戦い……殺し合いと言っても過言ではないのかもしれない。

「……なるほど。これは他に人がいない方がいいわな」

先ほど言ったジークの言葉を思い出す。確かにこれを見たらそう思うが……お二人さん?もう少し加減というものを覚えてくれないかな?じゃないと地面の砂があちらこちらに吹き飛んでとんでもないことに……。

「……俺、ここに座って生きていけるかな?」

彼女達の試合を観戦して命の危機を覚えたものの、流石に無断で離れるわけにはいかず、俺はビーチバレーというなのボールの撃ち合いを見守るのであった。

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