上 下
187 / 201

第186話 夜の時間

しおりを挟む

「……凄いなこれ」

流石に日が暮れてきたということもあり、観光や海で遊ぶのはまた今度と言うことに決定となり、今は自分たちが泊まる部屋を見てみたんだが……これがまた凄い。

よくあるなろうとかにでてくる普通の宿屋とは大違い。
この世界の貴族が使うような大きなベット、壁一面に広がる窓、様々な装飾が飾られているなど……自分が泊まるには少し遠慮してしまうような光景がそこにはあった。

「?なにやってるのよアクセル?そんなぼーっとしてないで荷物を起きましょ?あ、私がやってあげるわ」

「え、ちょま……」

「ふふっ、そんな遠慮しないの。お姉ちゃんだもの♪」

そんな勢いに呑まれ、マリアに俺の荷物を全て持って去られてしまった。

ソフィアもソフィアで何も不思議に思ってないのか、荷物置き場に自分の荷物をささっと置いていた。

……この二人、実は相当金銭感覚が狂ってるんじゃないか??

「ルシア様がお兄様に用意してくださったお部屋なんですから、予めは予想はしておりました……ただ、ここまでとは思いもしませんでしたが」

「……だよな」

ソフィアの苦笑している姿に俺もそう思ってしまう。
やはり、聖女様は偉大なんだな……それを実感してしまう。

「夜食はさっき食べたし、あとはお風呂に入って寝るだけね……明日が楽しみだわ」

ふふっと荷物を運び終わったマリアがいつもよりも少しルンルン気味になっている。
やはり女性ということもあって、旅行は楽しみだったんだろうな。

それに、宿屋……というかホテルに近い食事を頂いたんだが、やはり高級料理だった。

前世にいたものと比べたら味は確かに劣ってはいたが、それでもこの世界に転生して食べたものでは上位の美味さがあった。

……出来れば庶民が食べる様な物が食べたかったのは言わずもがなだ。
お金はあったものの、やはり元々庶民気質だったので何年経ってもこれは治りそうにない。

「……あ、あのお兄様!!」

「ん?」

すると、急にソフィアに声を掛けられる。妹の方を見ると……何故か顔が、というよりも身体が真っ赤な姿が目に映った。

「そ、その……その……!」

「……あなたまさか」

マリアは察したのだろうか、彼女同様に肌が熱るかのように、徐々に赤くなる。
何故か俺も嫌な予感を感じてしまうも、とりあえず話を聞こうとソフィアを待つ。

そして、あぅ……と恥ずかしそうにして数分が経った時、彼女の言葉が放たれる。


「そ、その!……お風呂、一緒に入りませんか!!」

「……ナンデ?」

予想は出来た。ブラコンだったこと、そしてアクセルのことが相当好きだということも予想していた。

だが、実際に聞いてみるとほんとにこの子の言ってる事がよくわからなかった。

「い、いいいいつまでも恥ずかしがっては駄目なんです!さささ最近お兄様の魅力に気づいた方が狙ってきて……な、ナーシャちゃんやルシアさんもお兄様に対して想っているのも見てて……お、お兄様との関係を深めなければと考えましてでして!!」

「……とりあえず落ち着け」


口調もおかしいし、目がぐるぐるしてるぞ。それに見ろ、マリアの顔も紅くなってるぞ~。

「……………あ、アクセルと……一緒に風呂………」

「………考えるなよ?」

もう頭の中がピンク色なのかと認識してもおかしくないくらい赤くなった頬を当てている彼女の姿を見て俺は頭が痛くなる。

「却下だ。流石に妹のお願いもそこまで行くとキャパオーバーしている」

「な、なぜ!?お兄様はソフィアに魅力を感じないのですか!?」

「いや、そうは言ってないが……」

アウトだろ普通に。冷静に考えて。

「……ねぇアクセル。もしかして……動揺してる?」

「……………」

マリアに指摘され、何故か口が動かない。
……頬を当ててみると、俺も少し暑いのが分かった。

「……風呂に入ってくる」

「お、お兄様!お待ちください!今の間は?今のはどういうことなんですか!!」

俺の方にとてとてとついていって、騒いでるソフィアと呆然とこちらを見ているマリアを置いて、俺は風呂場に行く。

……やめてほしいものだ。こういうのには、やはり慣れん。






「………くっつきすぎだろ」

お風呂に入った後、俺たちはあれから騒いだものの、時間も遅いということもあり、ベットに横になり、寝に入った。

だが、3つ分あるのに当たり前の様にマリアとソフィアが俺のベットに入ってきた。

しかも挟まれているから、どこうにもどくことが出来ずにいた。

「はぁ……まぁいいか。この姉妹と寝るならこういうことには予想出来てたし」

そう考え、俺はバロスにいる……奴について考える。

(……どうしようもない悲劇を迎えた人物……俺は、そいつと向き合わなければならない)

……それがどんな結末を迎えてもだ。最愛の者たちを失い、途方にくれている人物。
何故今も生きてるかは……分からない。しかし、原作が始まった頃に……アクセルたちが生まれた時にはその悲劇は既に始まっていた。

「……」

その人物との出会いを感じつつも、俺は明日に備えて目を閉じることにした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

神々に育てられた人の子は最強です

Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...