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第172話 友
しおりを挟む「……ほんとに大丈夫なの?」
「あ、あぁ……頭がぼんやりしてるだけだから心配しなくても……」
「……ごめんなのだアクセル……我が、我がもっとうまく立ち回っておれば……」
「い、いやローレンス……お前はよくやってくれたよ。油断した俺が悪い……ユニーレもほら、そんな顔するな」
「…………私がもっと冷静になっていれば…」
「う、うーん……?」
ソフィアに頼んで二人を呼んできたんだが……何故かしょぼくれた様子で俺にずっと謝っている。
ほんとに俺が悪いんだから何も言わなくていいのに……その二人の様子を見て思わずソフィアも苦笑していた。
「お二人とも、ずっとお兄様のこと心配していたんですよ」
「……自分を責めていたんじゃなくてか?」
……うーん、俺が何言っても無駄そうだなこれ。
「……あ、あの……アクセルさん」
「ん?」
そんな二人の様子をソフィアとともに見ていると、ローズが少し気まずそうに話しかけてくる。
「わ、私たちを連れて一体何をしようとするんですか……?突然連れてこまれてよく分からないのですが……」
「……そういえば、私もそうですね。アクセル様が無事で安心しきっていましたが……」
……そういえばまだ言ってなかったな。
「……ナーシャ。裁判で貴方に言った言葉、覚えていますか?」
「えっ?」
その言葉に目をパチパチと瞬きをしている。まぁ仕方ないか、あの後色々とあったもんな。
「貴方を救うと。その答えを……これから提示します」
「………私を……」
「……ローレンス。そんな凹んでないで早く立ち直ってくれ。お前がその様子じゃあそこに行けないだろ」
「……う、うむ……流石に切り替えるのだ……しかし、何の為にあんな場所を……?」
「あぁ。それはな——」
ナーシャとローズの方を見て俺は言い放つ。
「——嘗ての友とこいつらを会わせるためだ」
◇
「……着いたぞ。ここがその場所だ」
ローレンスの転移魔法により俺たちはおどろおどろしい森の中にやってきた。
「……ちょっと待って。この場所って確か……」
「あぁ。アクセルから聞いた時は驚いた。我らでも噂しか聞いたことがない場所であったからな……まさか実在するとは」
ローレンスとユニーレはその森を間近で見て冷や汗をかきながらそんな会話をしている。
「あ、あのユニーレさん……ここは一体……?」
ソフィアが彼女に聞くが……ユニーレは俺の方を見てくる。
それに対して俺はただ首を振る。
「……今は、教えられないわ。でもそのうち分かるはずよ」
「?それは、どういう……」
「……アクセル。もしこの場所が本当なら急がねばならんのではないか?」
「あぁ。ソフィア達には悪いが、早く進もう」
視界を遮るように薄紫の霧で覆われている森の奥へと進む。
その周辺には魔物はおろか、生き物も鳴き声も姿も見られない。
……やはり思った通りか。
そしてしばらく進んでいくうちに……開けた場所へと辿り着く。
「……ここら辺でいいだろう。ローレンス、ユニーレ。準備をしてくれ」
「……大丈夫なの?そんな身体で……今も無理してるんじゃ」
「心配するな。この時のために魔法も極めに極めまくったからな」
ありがとうなとユニーレに言ってから、俺は開けた所の奥に移動する。
ローレンスとユニーレもそれぞれみんなとは離れた場所に移動して、三角形になるような配置になる。
「……いいか?アクセルがやりたいことがそういうことであれば我らでも成功するか分からんぞ」
「承知の上だ。だが……お前らなら大丈夫だ」
一々心配しても仕方ないしな。
そして、彼女らと顔を合わせてから俺たちは中心に集めるように魔力を放つ。
『我ら、三者が命ずる。冥界に迷える魂よ。この死者の森にて今ここに顕現せよ』
詠唱を唱えた瞬間、ごっそりと魔力と虚無力が吸い取られる感覚に陥った。
流石にきついか……でもこれぐらいなら。
俺たちの下に魔法陣が展開され、その中心に取り囲むように霧が集まってくる。
ソフィアたちはその幻想的な光景に息をするのも忘れているかのようにじっくりと眺めていた。
そしてその幻想的な光景が終わり、霧も落ち着いたように発散していく。
「……成功、か」
誰かが言ったか分からんがその言葉に頷く。
中心を囲んでいた霧が徐々に晴れ……その中に人影が現れていく。
「「ッ!?」」
そして、二人は……ローズとナーシャは驚いたはずだ。
だってその人物は……。
「………で、ディーナ……?」
——バシリス教団であるはずの彼女が……幼き姿のまま現れたのだから。
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