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第161話 全力
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「……へぇ……私に敵対するんだ……ナーシャ」
「……」
静寂の間が訪れる。意味深な笑みを浮かべているディーナに対して、臆せずに彼女を見つめているナーシャ。
王族と侯爵令嬢という威厳のある二人がその場にいるだけで緊張感が増していた。
「いいの?そうやって私達を裏切るような真似をして。貴方にとってもあの約束は大事なんじゃないの?」
「……構いません。元々、ソフィアちゃん達と敵対するなんて私には出来ません」
「ふーん……なんか思い通りにいかないなぁ」
少し不機嫌そうに頬をかきながら、ナーシャに対して疑問を持つ。
「……ねぇ、なんでそこまでして彼に拘るの?」
その彼とは言わずもがなアクセルのことであろう。ナーシャは特に同様せずに彼女の言葉に耳を傾ける。
「そこの姉妹さんたちもさ、どうして彼……アクセルさんの言う通りに動いてるの?確かに面白い存在ではあるよ。でも……たったそれだけじゃん」
「……」
「貴方達は彼の言う事で動けない人形なの?違うでしょ?もっと上に……相応の然るべき権威を持つべきよ。だから私の手を取って――」
「――だまりなさい」
そこでディーナの言葉が無慈悲に遮られる。その言葉に反応したのは彼の姉であるマリアであった。
「私達があの子の操り人形?はっ、冗談もほどほどにしておきなさいよ王女様」
「……なんですって」
「私たちは……少なくとも私は、私の意思であの子の言う事に従ってるわ。困っているときに力を貸してあげる……それがお姉ちゃんとしての約目でしょ?」
「……それに、お兄様はいつも一人で何かを抱えようとしています。私たちにとって測りしきれないとてつもなく重いものを……彼を一人にさせないために私たちは動くのです」
どれだけ甘い言葉で説得しようとも、1ミリも揺れる様子がない。それほどまでに姉妹のアクセルに対する想いというのは計り知れないものなのだ。
「……分かったでしょローズ」
「……なにが?」
「彼は……アクセル様は命を掛ける価値がある。彼が動くのはいつも大切な誰かのため……平和へと繋ぐ道を導くために動いてるのです。だからこそ彼の周りには多くの人間が後ろに存在する。貴方達とは違う」
「……私たちバシリス教団もそのために動いてるよ。この世界の秩序を一度壊してまた再生して――」
「――それは、平和とは言いません」
「……」
「……その後はどうなるのですか?何もかもが破壊させた後に残ってるのはなんなのですか?貴方達はただ……私利私欲のために動いてるだけではありませんか」
「……へぇ」
ディーナの中のなにかが切れ始める。短剣一振りにより発生した斬撃、それをナーシャは水魔法で出来た槍を飛ばして相殺する。
その攻防が繰り広げられた時間、わずか0.1秒。
「……私利私欲……その言葉、私がだいっきらいな言葉なの知ってるよね?」
「えぇ。だから敢えて言わせていただきましたよ。貴方は……私利私欲のために動いてるだけだと」
「……おーけーおーけー、貴方達の意思はよぉく分かったわ……嫌というほどにね」
瞬間、外の……特に王都周辺が大爆発が起こった。それがディーナの怒りを表してるほどだと言われてもおかしくはないほどにだ。
「いいよいいよ。みんなでかかってきなよ。大丈夫……もう、遠慮なんてしないからさ」
そして、彼女が操っていた騎士が再び動き始める。しかし、ナーシャは特に臆せず冷静に自身に降りかかる火の粉を振り払うように対処する。
「水鉄砲」
指先から放たれる複数の圧縮された水の銃声が響き渡り、彼ら全員の急所に命中する。その容赦のなさに、本人以外驚きを隠せずにいた。
「……相変わらず慈悲がないね」
「ソフィアちゃん達は優しいようですが、私はそこまで甘くありませんので」
そして事切れたように、動かなくなる騎士。その様子を見たディーナは見限るように彼女らと対面する。
(……あの魔法で奴らの体内にあった私の魔力は中和されたか。これじゃあ操ることも出来ないし、出来れば人数は欲しいところだけど、この子達相手にそれは無謀か)
「マリア様。ここは私たちに任せてはくれませんか。ローズとは……ソフィアちゃんと一緒に決着をつけたいです」
「……どうやら、そうした方がいいみたいね。ソフィア、貴方もそれでいいかしら?」
「はい……お姉様はお兄様たちをお願いします」
ソフィアとナーシャに確認を取ってからマリアは力強く頷き、外に出るべく王宮の扉に向かって出ていく。
「逃すと思う?」
しかし、ディーナはマリアに向かって魔法を放とうとして……ソフィアの突きによる衝撃で壁まで吹き飛ばされる。
あまりの衝撃の強さに顔を顰めてしまい、無意識にソフィア達を睨みつける。
「貴方のお相手は私たちですローズさん」
「勿論、相手をしてもらえますよね?久しぶりの……戦闘ごっこですし」
「……はぁ、分かった分かった。付き合うよ……でもね」
ディーナから放たれる魔力が濃く放たれる。先程のナーシャの言葉に対する怒りを通じて……ついに彼女も本気になる。
「じゃあどんな目に合っても文句なしだよ。ナーシャ達が始めたことだからさ。後悔しなでよね?」
「……その言葉、そっくりそのままお返しします」
ソフィアもディーナ同様、魔力が開放される。その魔力は嘗て開かれた武勇祭のときの彼女のものとはまるで別物だった。
「こちらも容赦はしませんのでご安心を。全力で、貴方達の計画を阻止させて貰います」
「……」
静寂の間が訪れる。意味深な笑みを浮かべているディーナに対して、臆せずに彼女を見つめているナーシャ。
王族と侯爵令嬢という威厳のある二人がその場にいるだけで緊張感が増していた。
「いいの?そうやって私達を裏切るような真似をして。貴方にとってもあの約束は大事なんじゃないの?」
「……構いません。元々、ソフィアちゃん達と敵対するなんて私には出来ません」
「ふーん……なんか思い通りにいかないなぁ」
少し不機嫌そうに頬をかきながら、ナーシャに対して疑問を持つ。
「……ねぇ、なんでそこまでして彼に拘るの?」
その彼とは言わずもがなアクセルのことであろう。ナーシャは特に同様せずに彼女の言葉に耳を傾ける。
「そこの姉妹さんたちもさ、どうして彼……アクセルさんの言う通りに動いてるの?確かに面白い存在ではあるよ。でも……たったそれだけじゃん」
「……」
「貴方達は彼の言う事で動けない人形なの?違うでしょ?もっと上に……相応の然るべき権威を持つべきよ。だから私の手を取って――」
「――だまりなさい」
そこでディーナの言葉が無慈悲に遮られる。その言葉に反応したのは彼の姉であるマリアであった。
「私達があの子の操り人形?はっ、冗談もほどほどにしておきなさいよ王女様」
「……なんですって」
「私たちは……少なくとも私は、私の意思であの子の言う事に従ってるわ。困っているときに力を貸してあげる……それがお姉ちゃんとしての約目でしょ?」
「……それに、お兄様はいつも一人で何かを抱えようとしています。私たちにとって測りしきれないとてつもなく重いものを……彼を一人にさせないために私たちは動くのです」
どれだけ甘い言葉で説得しようとも、1ミリも揺れる様子がない。それほどまでに姉妹のアクセルに対する想いというのは計り知れないものなのだ。
「……分かったでしょローズ」
「……なにが?」
「彼は……アクセル様は命を掛ける価値がある。彼が動くのはいつも大切な誰かのため……平和へと繋ぐ道を導くために動いてるのです。だからこそ彼の周りには多くの人間が後ろに存在する。貴方達とは違う」
「……私たちバシリス教団もそのために動いてるよ。この世界の秩序を一度壊してまた再生して――」
「――それは、平和とは言いません」
「……」
「……その後はどうなるのですか?何もかもが破壊させた後に残ってるのはなんなのですか?貴方達はただ……私利私欲のために動いてるだけではありませんか」
「……へぇ」
ディーナの中のなにかが切れ始める。短剣一振りにより発生した斬撃、それをナーシャは水魔法で出来た槍を飛ばして相殺する。
その攻防が繰り広げられた時間、わずか0.1秒。
「……私利私欲……その言葉、私がだいっきらいな言葉なの知ってるよね?」
「えぇ。だから敢えて言わせていただきましたよ。貴方は……私利私欲のために動いてるだけだと」
「……おーけーおーけー、貴方達の意思はよぉく分かったわ……嫌というほどにね」
瞬間、外の……特に王都周辺が大爆発が起こった。それがディーナの怒りを表してるほどだと言われてもおかしくはないほどにだ。
「いいよいいよ。みんなでかかってきなよ。大丈夫……もう、遠慮なんてしないからさ」
そして、彼女が操っていた騎士が再び動き始める。しかし、ナーシャは特に臆せず冷静に自身に降りかかる火の粉を振り払うように対処する。
「水鉄砲」
指先から放たれる複数の圧縮された水の銃声が響き渡り、彼ら全員の急所に命中する。その容赦のなさに、本人以外驚きを隠せずにいた。
「……相変わらず慈悲がないね」
「ソフィアちゃん達は優しいようですが、私はそこまで甘くありませんので」
そして事切れたように、動かなくなる騎士。その様子を見たディーナは見限るように彼女らと対面する。
(……あの魔法で奴らの体内にあった私の魔力は中和されたか。これじゃあ操ることも出来ないし、出来れば人数は欲しいところだけど、この子達相手にそれは無謀か)
「マリア様。ここは私たちに任せてはくれませんか。ローズとは……ソフィアちゃんと一緒に決着をつけたいです」
「……どうやら、そうした方がいいみたいね。ソフィア、貴方もそれでいいかしら?」
「はい……お姉様はお兄様たちをお願いします」
ソフィアとナーシャに確認を取ってからマリアは力強く頷き、外に出るべく王宮の扉に向かって出ていく。
「逃すと思う?」
しかし、ディーナはマリアに向かって魔法を放とうとして……ソフィアの突きによる衝撃で壁まで吹き飛ばされる。
あまりの衝撃の強さに顔を顰めてしまい、無意識にソフィア達を睨みつける。
「貴方のお相手は私たちですローズさん」
「勿論、相手をしてもらえますよね?久しぶりの……戦闘ごっこですし」
「……はぁ、分かった分かった。付き合うよ……でもね」
ディーナから放たれる魔力が濃く放たれる。先程のナーシャの言葉に対する怒りを通じて……ついに彼女も本気になる。
「じゃあどんな目に合っても文句なしだよ。ナーシャ達が始めたことだからさ。後悔しなでよね?」
「……その言葉、そっくりそのままお返しします」
ソフィアもディーナ同様、魔力が開放される。その魔力は嘗て開かれた武勇祭のときの彼女のものとはまるで別物だった。
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