上 下
151 / 207

第151話 血筋

しおりを挟む
キサマァアア!!それがどれほど罪深きことなのかわかってやってるのか!!」

法廷中にクリフトの声が響き渡る。その豹変ぶりに思わず全員が彼に注目する。

「別に、私は脚が滑っただけですよ。おっと……」

そう言ってまた絵が書いてある金属に脚を踏む。

瞬間、彼は今にも殺さんとばかりに俺に鋭い目つきで睨みつけてきた。

「……クリフトよ。何事だ。いくらそなたであっても騒ぐことは許さんぞ」

「国王!この者に死刑を!証言はとってあります!!今すぐに!!」
「まぁまあ少し落ち着いてくださいよ」

少し大きな声を出して、彼の言葉を遮る。

「……被告人よ。一体何事だ?」

「……まずは一点。この者……及びオルバドス家はバシリス教団と繋がっています」

そう言った瞬間、ざわざわと傍聴人席が騒ぎ出した。

「その根拠一。この絵を踏んだことによる過剰反応」

そう言って今俺が踏んだ踏み絵を手で持ち上げる。
そこには槍と剣を待った阿修羅のような異形な姿が映っている。

「そ、それは……?」

「一説によると、これは彼らが信仰する神、グラディウスの姿だと言われているぞ……なんでここまで反応が敏感なのか……分かるな?」

ラーナとルシアが驚愕の様子のまま、その絵を間近で見ている。

クリフトは怒りで冷静でないのか、殺気だけで俺を殺さんと思えるほどの目力で見ている。

「……根拠そのニ。彼は……彼らは私を陥れようと捏造の証拠を提出してきた」

そう言って先ほど証拠として提出された水晶に再び魔力を抽出……本来の声になるように調整する。

「な、なに!?」

それにはクリフトも声が荒げた。それもそのはずだ。だって……その声の主は他でもない、クリフト自身であったのだから。

「……どういうことだ被告人?」

「簡単なことですよ国王様。彼は私を確実に有罪させるためにこの水晶玉を使った。でもその声は私のではなかった……クリフト様本人だったのですよ」

「で、出鱈目だ!!魔力を操作すればそんなもの誰だってできる!!」

「ではこれを作った人……もしくは宮廷魔法使いを呼んでみますか?彼らなら本来の声を再生することができます……どうしますか?」

「くっ……」

反論してきたが、ぐぅの音も出ずに黙って俯いてしまう。その様子を見て再び話を続ける。

「……根拠三。彼らはカロナイラ家の長女、ナーシャ・カロカイラを脅して、その親であるバレロナ様とシレイ様を誘拐した」

「……なんだと?」

それに反応したのは、他でもない国王オルデリング王であった。

「……どういうことだクリフトよ。我が友、バレロナを攫い、尚且つそこにいるナーシャ・カロナイラを脅そうとは」

「こ、こんな奴に耳を貸さないでください国王様!そんなものどこにも証拠がないではありませんか!!」

オルデリング王とクリフトが口論をしている間、ナーシャから悲痛な目線でこちらを見てきた。

「あ、アクセル様……!そのことは…!」

「……言ったはずですよナーシャ……信じろと」

「っ!?」

「だから……大丈夫だ」

苦しそうに顔を歪ませているナーシャにそれだけ伝えて、最後に俺はその根拠を彼らに言い放つ。

「根拠……その四」

そして、俺はクリフトに向かって魔法を放った。その魔法の名は…… 魔法解除マジックキャンセル

「なぁっ!?」

「バシリス教団は人だけではなく、数ある多くの種族が加入しているグループだ」

彼が驚く間も、クリフトの身体は徐々に身体つきが変わっていく。
そして身体の変化が終わった所で見えてくる……彼ら特有の長い耳が法廷中の人たちの目に入った。

「そして、オルバトス家はただの人種族ではない。その正体は——」



——人族の血とエルフの血を引き継いだ混血の者たち。それが、オルバドス家の正体だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

神々に育てられた人の子は最強です

Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

悪役貴族に転生した俺が鬱展開なシナリオをぶっ壊したら、ヒロインたちの様子がおかしいです

木嶋隆太
ファンタジー
事故で命を落とした俺は、異世界の女神様に転生を提案される。選んだ転生先は、俺がやりこんでいたゲームの世界……と思っていたのだが、神様の手違いで、同会社の別ゲー世界に転生させられてしまった! そのゲームは登場人物たちが可哀想なくらいに死にまくるゲームだった。イベボス? 負けイベ? 知るかそんなもん。原作ストーリーを破壊していく。あれ? 助けたヒロインたちの目のハイライトが……? ※毎日07:01投稿予定!

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

突然シーカーになったので冒険します〜駆け出し探索者の成長物語〜

平山和人
ファンタジー
スマートフォンやSNSが当たり前の現代社会に、ある日突然「ダンジョン」と呼ばれる異空間が出現してから30年が経過していた。 26歳のコンビニアルバイト、新城直人はある朝、目の前に「ステータス画面」が浮かび上がる。直人は、ダンジョンを攻略できる特殊能力者「探索者(シーカー)」に覚醒したのだ。 最寄り駅前に出現している小規模ダンジョンまで、愛用の自転車で向かう大地。初心者向けとは言え、実際の戦闘は命懸け。スマホアプリで探索者仲間とダンジョン情報を共有しながら、慎重に探索を進めていく。 レベルアップを重ね、新しいスキルを習得し、倒したモンスターから得た魔石を換金することで、少しずつではあるが確実に成長していく。やがて大地は、探索者として独り立ちしていくための第一歩を踏み出すのだった。

処理中です...